農地法の売買(貸借)の許可基準

許可ができない場合

以下のいずれかに該当する場合は原則許可することができません。

1.下限面積に達しない場合

限りある農地を農業生産力の弱い農家が取得することは農業生産力の増進や農地の効率的利用につながらないため、取得後の農業経営面積が30アール(3反)に足りない場合は許可できません。

2.農作業に常時従事しない場合

農地の権利を得ようとする人またはその世帯員が、農業経営に必要な農作業に常時従事すると認められない場合は許可できません。

これは、実際に農作業を行わない農家に農地の権利取得の許可をすることは農業政策上好ましくないためで、「常時従事する」と認められる農作業従事日数は、年間150日以上とされています。

※ただし、農地法改正により「農作業に常時従事しない個人」についても解除条件付きで農地を借りることができるようになりました。詳細は下記の『農地の権利移動規制の緩和』をご覧下さい。

3.地域との調和要件に該当する場合

「地域との調和要件」とは農地の集団化、農作業の効率化その他の地域における農地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生ずるおそれがある場合を言います。具体的には以下のとおりです。

・既に集落営農や経営体へ農地が面的にまとまった形で利用されている地域で、その利用を分断するような権利取得

・地域の農業者が一体となって水利調整を行っているような地域で、この水利調整に参加しないで営農が行われることにより、他の農業者の農業水利が阻害されるような権利取得

・無農薬や減農薬での付加価値の高い作物の栽培の取り組みが行われている地域で、農薬使用による栽培が行われることにより、地域でこれまで行われていた無農薬栽培等が事実上困難になるような権利取得

・集落が一体となって特定の品目を生産している地域で、その品目に係る共同防除等営農活動に支障が生ずるおそれのある権利取得

・地域の実勢の借賃に比べて極端に高額な契約が締結され、周辺の地域における農地の一般的な借賃の著しい引き上げをもたらすおそれのある権利取得

など

4.すべてを耕作しない場合

申請により農地の権利を取得したあと、申請者又はその世帯員が権利を所有する全ての農地を耕作すると認められない場合は許可できません。

例えば次のような場合がこれに該当します

・農地取得後、自分では耕作を行わずに他人に転売、賃貸することが明確な場合

・自分の所有する農地を他人に貸し付けていて、その農地を返してもらって自分で耕作することに支障がないにも関わらず、特段の理由もなく貸し付けたままで新たに別の農地を取得しようとする場合

5.転貸の場合

所有権以外の権限(賃借権、使用貸借権による権利等)に基づいて耕作している人が、その土地をさらに第三者に転貸することは、権利関係がいたずらに複雑化し、中間地主を認めることになるため、許可できません。

6.効率的な利用ができない場合

権利を得ようとする人またはその世帯員の農業経営状況や、住所地からその農地までの距離(通作距離)等からみて、効率的な利用ができると認められない場合は許可できません。 このような事例で許可すると、その農地の生産性が低下するばかりでなく、その地域における農地の集団性の分断等、効率的な利用の妨げとなるためです。

7.農地所有適格法人以外の法人が権利取得する場合

農地所有適格法人以外の法人が農地の権利を取得することはできません。

一般法人の権利取得について

農地法の改正により「農地所有適格法人以外の法人」、「農作業に常時従事しない個人」についても農地を借りることができるようになりました(注意:所有権の取得はできません)。ただし、毎事業年度の終了後3ヶ月以内に、作物の種類別作付面積または栽培面積、生産数量および反収、周辺の農地等の農業上の利用に及ぼす影響などを記載して報告することが義務づけられます。

また、以下の1~3の条件を満たしていなければなりません。

(1)農地を適正に利用していないと認められる場合は、貸借の解除をする旨の条件が書面による契約において付されていること(解除条件付き貸借)

 ※解除条件付き貸借の契約書には次の4点を必ず明記してください。

  (ア)農地を明け渡す際の原状回復の義務は誰にあるのか
  (イ)原状回復の費用は誰が負担するのか
  (ウ)原状回復がなされないときの損害賠償の取決め、担保措置があるのか
  (エ)貸借期間の途中の契約終了時における違約金支払いの取決めがあるのか

(2)地域の他の農業者との適切な役割分担の下に、農業経営を継続的・安定的に行うと見込まれること

 ※適切な役割分担とは

  (ア)農業の維持発展に関する話し合い活動への参加
  (イ)農道、水路、ため池等の共同利用施設の取決めの遵守
  (ウ)獣害被害対策への協力   など

 ※継続的・安定的な農業経営とは…

  (ア)機械や労働力の確保状況等からみて、農業経営を長期的に継続して行う見込みがあるかどうか

(3)法人の場合、その法人の業務を執行する役員のうち1人以上の者が法人の行う耕作の事業に常時従事すること