佐 藤  明 議員 質 問
○議長  次に、12番佐藤 明議員。
 〔12番 佐藤 明議員 登壇〕
○佐藤 明議員  私は、通告してあります介護保険について質問をいたします。
 政府は介護保険導入の目的を、「家族介護から社会が支える介護へ」、「在宅で安心できる介護へ」などと盛んに宣伝してきました。しかしながら、現実に起こっている事態は新たな家族介護の増大と施設介護への移行であり、政府の考えとは逆の方向を示しております。また、肝心の介護施設も依然として不足したままであります。
 昨年1年間に報道された、高齢者介護をめぐる殺人、無理心中などの痛ましい事件は、全国各地で30数件に上っていると言われております。介護保険の存在意義そのものが問われる事態となっているのであります。
 介護保険を存続させるというのなら、恒久的な低所得者対策を確立することが緊急かつ必要最小限の前提になると思います。なぜ、低所得者対策が必要か。実施1年を経過した今、この間の議論も踏まえて、改めて考え方を何点か指摘をしておきたいと思います。
 第1番目には、住民税非課税者から保険料や利用料を徴収することがそもそも問題があるということであります。この間の提案でも明らかなように、住民税非課税というのは生活費しか所得がない人に課税しないという原則であります。このルールは、憲法第25条に定める「国民の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するために、国の義務として税制の上で具体化され定着したものであります。それを保険料や利用料の名目で非課税者から取り立てることは、国民の生存権を事実上否定するものであり、到底許されるものではありません。しかも、わずか月額1万 5,000円以上の年金から保険料を天引きするという問答無用式のやり方、二重の過ちと言わざるを得ません。
第2点目は、低所得者ほど要介護率が高いにもかかわらず、負担がネックになっており、サービスを受け入れられないという矛盾であります。言うまでもなく、人はだれも過去の生活を背負って高齢者になります。長い間にわたって重労働に従事した人、あるいは所得が少なく厳しい生活を余儀なくされた人ほど、年をとって病気になる確率が高くなると言われております。
 それを実証したのが、日本福祉大学の研究チーム「地域ケアプロジェクト」の調査結果であります。中部圏のある人口4万人の市を対象にした同調査によると、65歳以上の 5,124人全体では要介護率高齢者の割合は11.3%であったが、所得階層別に見ると、所得ゼロでは17.2%に上り、所得がふえるにつれて 8.4%、 5.4%と低下し、最高所得階層の 200万円以上では 3.7%に低下しております。つまり、所得の一番低い人は、所得の一番高い人と比べて要介護率が5倍も多いということであります。調査結果を発表した日本福祉大学教授は、 100万円所得が少ないことはおおむね5歳分の老化に相当すると指摘をしておるのであります。要介護率が高い低所得者がサービスを手控えることは、サービスを提供する事業者にとっても、低い介護報酬に加えて利用者が減り、経営が成り立たなくなることは明らかではないでしょうか。
この事態を放置すれば、やがては、国民年金の空洞化の現状に見られるように、介護保険制度の存立基盤そのものを切り崩すことになりかねません。
 第3番目には、政府の低所得者対策が極めて不十分であるということであります。政府は口を開けば、「保険料は所得階層別に5段階徴収になっている」、あるいは「利用料も特別対策で負担軽減の措置をとっている」などと言っております。しかし、第2、第3段階の高齢者でも、第1段階の高齢者よりも所得が低いという、いわゆる「逆転現象」が広く存在している事実を政府は直視しようとしません。
第1段階に所属する老齢福祉年金受給者の年金は、月額3万 4,000円程度であります。旧厚生省の資料でも、この老齢福祉年金よりも低い年金しかもらっていないお年寄りが全国で 253万人もいると言われております。保険料の基準額が仮に月額 3,000円とすると、2001年10月以降、第1段階(老齢福祉年金受給者)の保険料は月額 1,500円ですが、第1段階よりも年金収入が低い人でも、老齢福祉年金の受給者でないという理由から第2、第3段階となり、それぞれ月額 2,250円、 3,000円を徴収されることになり、これは大きな矛盾と言わざるを得ません。
 第4番目には、長引く不況と雇用不安、社会保障の連続改悪などで国民生活は悪化の一途をたどっており、自己防衛ができなくなっている低所得者層の暮らしは一層大変さを増しております。我が国の所得格差は異常であり、総務庁「家計調査年報」によっても、90年代以降、可処分所得は高額所得者層がひとり勝ちする一方で、低所得層は生活を切り詰めている現状であります。私は介護保険制度の原点は、だれもが安心して必要に応じて受けられる、これが介護保険制度だと思います。そういう立場から次の3点を質問いたします。
 第1点目は、介護保険制度が実施されて1年を経過しました。この間いろいろな問題点も出ておりますが、どのように総括をされるのかお尋ねをいたします。
 第2番目には、全国各地で保険料あるいは利用料等の減免制度を実施している自治体がふえております。安心して利用できる介護保険にするためにも、減免制度を考える時期と思いますがどうでしょうか。
 3番目には、低所得者対策は国の特別対策を拡大するやり方ですが、新規にサービスを受ける人にも、訪問介護だけでなく、訪問看護、訪問入浴、通所介護などの他の在宅サービスに広げてはどうでしょうか。
 以上、申し上げましたが、私はこれまでも再三再四、介護保険制度について質問をしてまいりました。今度こそ、市長の誠意のある答弁を期待を申し上げまして、私の質問を終わります。
○議長  ただいまの佐藤 明議員の一般質問に対して答弁を求めます。
 市長。
 〔荒井幸昭市長 登壇〕
○市長  最初に、市長として議員の皆さんからいろいろな御指摘をいただいておりますが、常に私は誠意をもって対応、答弁をさせていただいておりますことを御理解をいただきたいと思います。
 最初の問題でありますが、いろいろな課題が出ているだろうという御質問。今、行政としてとらえているのは、まず1次判定と現場認識の乖離。介護支援専門員の不足によります業務の過重と遅延等が顕在しつつありまして、憂慮いたしておるところでございます。
 また、二つ目には、居宅介護サービス利用限度額の利用割合が平成12年度で31.9%と若干低目に推移をいたしているようでございまして、なお今後一層の制度推進と、高齢者福祉の総合的な施策の推進や介護予防対策の充実を図っていく必要があろうと思います。
 1年間の総括ということでございますが、平成11年度策定の本市介護保険事業計画に沿っておおむね順調に推移をいたしておるものと思います。
 それから、2点目の介護保険料利用者負担の減免についてですが、議員御指摘のとおり、これは一番は国の課題があるわけでございますが、減免、今、南陽市では介護保険料は所得区分によって軽減措置や、あるいは災害や収入の著しい減少などに制度上の減免制度が確立されておりますから、保険料の独自減免については現段階では行う考えを持ってございませんので、今後なお慎重にいろいろな御意見をいただきながら検討することはやぶさかでないなと、現在では考えていないということを申し上げたいと思います。
 なお、ホームヘルプサービス利用者に対する経過措置及び社会福祉法人等による生活困難な方々への減免措置は実施をいたしているところでございます。
 それから、3点目の低所得者対策につきましては、介護保険制度上の問題というよりも、社会保障制度関係全体の課題ではないだろうかと、このように考えております。なお、居宅サービス全体の適用については今のところ予定はしてございませんが、この制度そのものが非常に流動的であることから、今後、国の動向等を踏まえながら、いましばらく推移を見守る必要があるものと思いますので、御理解を賜りたいと思います。以上です。
○議長  それでは、再質問に入ります。
 佐藤 明議員。
○佐藤 明議員  何点か再質問いたします。
 最初に、第1番目の介護保険制度が実施されましてちょうど1年を経過しております。この間、さまざまな問題点も出てきていると。私も各地に出向いていろいろ実態なども聞いてもきたわけですけれども、その中でやはり一番の問題点は、利用料の軽減ということがよく出されておるわけであります。そういう点で、利用したくても利用できない、こういう声も大分聞こえてくるわけです。そういう点で、この1年の経過する中で市長の答弁ではおおむね順調に推移をしているのでないかと、このような答弁であったわけですが、私は先ほど言ったようにいろいろな問題点も出ているのかなと、このように考える一人であります。
 2番目には、利用料のあるいは保険料の減免の問題であります。せんだって市からの資料をいただいたわけですけれども、この中で、利用料の軽減策、いわゆる減免をとっている自治体は 635自治体、このように資料では全国の各自治体のうち19.5%、約2割のような状況であります。また保険料などは、この資料によりますと 139自治体、このような介護保険課の資料であります。
 ですから、先ほど市長は、現段階では考えていないと、国の動向も見ながらというふうなお話だったわけですけれども、しかし実態は、何回も私指摘をしてまいったわけですけれども、保険にかかりたくて、あるいは必要に応じてかかりたいんだけれども、金がかかるんでかかれないと。こういうふうなことがあるわけであります。
 ある社会福祉法人の特養の資料を見てみますと、特養に現在入っている人は経過措置として5年間、介護保険導入前のそういう中でされているというような状況であります。しかし、新規に介護保険にかかりますと余計に保険料がかかると、こういう状況もあるわけです。しかも、同じ介護保険を受けていながら利用料が違ってくると、こういう経過もあるわけであります。
 そういった人たちに対しても、これは私もいろいろ試算をしてみたんですが、大した金額がかからないわけですね。ですから、この市で発行している「私たちの介護保険」という小冊子があるわけですけれども、この中でも「在宅サービスの費用」ということで出ているわけですけれども、例えば要支援で6万 1,500円というふうになっているわけですけれども、例えば、短期入所、ショートステイですね、これは6カ月間で7日という状況であります。あとほかにかかれば自己負担と、こうなるわけですから大変な負担になってくる。
 そうした場合、その人も困る、あるいは介護している人も困るという状況も出てくるわけです。ですから、そういった人たちのためにも、この格差をなくしていくということも非常に大事なものではないのかなと、このように思いますが、その辺の考え方についてお尋ねをしたいと思います。
 それからもう1点でありますが、低所得者の問題でありますが、特別対策ということで、こういった特別対策を設けて訪問看護を中心にやっているようでありますが、しかしこれだけでは非常に不十分だと思うんですね。先ほど市長は今の状況では考えていないということであるようですが、そうでなくて、せめて所得の低い人、こういった方たちに対しまして何らかの対策を立てない限り、だんだんだんだん大変になるということは、これは火を見るよりも明らかと言わざるを得ないわけです。ですから、こういった対策も含めてとると。
 しかも、所得の低い人は生活保護世帯よりも大変になっているというお話も聞くわけです。一体そういった実態を市長はどうとらえておられるのか、その辺のこともあわせて答弁を願いたいと思います。
○議長  市長。
○市長  佐藤議員のいろいろな問題点というようなことで。確かに利用者から聞けば、これは高いより安い方がいい、安いよりただの方がいいという考え方に立たれるのが当然だろうと思います。しかしながら、これは介護保険ということでありますから、保険料を納付いただいてその見返りとしてサービスを受ける、これが保険だと思います。
 しかしながら、今、いろいろな御指摘をいただきまして、 3,200の自治体で減免している635自治体があるというお話も賜りましたし、また確かに特養に入っている方、今、入ればやはり介護保険のあれで確かに高くなっています。従前入った経過措置として5年間は据え置きですから。その格差があるということは私も認識をいたしております。
 ただ、どういう形でやろうかというのは、今のところ担当の方とも打ち合わせ等もございませんし、いろいろな調査をしたいというふうな話は介護保険課の方からも来ております。それの調査のために、やっぱりある程度膨大な費用もかかるようでございますから、もう少し私はその調査とかアンケートとかそういうものよりも、生の声を聞きながら、行政としてどういう対応をしたらいいのかなということでないと、アンケートをとれば、先ほど議員が御指摘のとおり「利用料が高い、もっと安くしてほしい」、あるいは「低所得者はただにしてほしい」という意見が来ることは、これは間違いないわけでございますから。実のある、中身に沿った対応を検討している必要があるのだろうと思います。
低所得、低所得ということでございますが、やはり所得の低い方、あるいは生活保護者よりももっと大変だというようなことも確かにお話を賜ればあるのかなと。では、今後どういうふうにしたらいいのか。ただ、保険料の減免、何かのボーダーライン、基準になるものもはっきりしないと、一概に「では、やりましょう」ということにはならないだろうと考えますので、今後いろいろな面でひとつ、私含め担当の所管の介護保険課あたりにも御指導をいただければなと思います。以上です。
○議長  それでは、再々質問に入ります。
 佐藤 明議員。
○佐藤 明議員  最後に1点だけ、ちょっと質問させていただきます。
 私この問題で、まず市長と何回もやっておりますから、大体市長の考え方もわかります。今、新しいという、市長も今も答弁されたんですが、調査、アンケートが非常に大事だと思うんですね。しっかりとっていただいて、保護者の立場でしっかり受けとめていただきたい。
 一つだけ。きょうのラジオを朝聞いていたんですが、介護保険が導入されましてちょうど1年間。この導入によって生活が圧迫されているというふうなことも、ちょうどアンケートで出ているわけです。負担がふえたということは、75%の人たちがそう感じていると。当然だと思うんです。介護保険が導入される前よりも、これは負担がふえているわけですから。実態としてはそうでしょう。あと金額も、以前よりも当然ふえているという実態もあるわけです。ですから、その辺、事務当局と御相談されまして、先ほど言われましたようなことを、ぜひひとつ要望しておきたいと思います。お願いします。
○議長  要望ですか。では、以上で佐藤 明議員の一般質問を終了しました。どうも御苦労さまでした。