令和7年度施政方針

  施政方針とは、市長の市政運営の基本方針として、翌年度の主要事業や予算について方向性を示すものです。 
  令和7年3月3日開会の南陽市議会令和7年3月定例会において、白岩市長が令和7年度施政方針を述べました。(関連ファイルからPDF版をダウンロードできます。)

令和7年度施政方針

1 はじめに

 令和7年度予算案をはじめとする重要な議案をご審議いただく南陽市議会3月定例会の開会にあたり、市政運営に臨む所信の一端と施策の大要を申し上げます。
 はじめに、議員各位並びに市民の皆様におかれましては、日頃より市政全般にわたりご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。
 昨年は、元日に能登半島地震が発生し、8月には南海トラフ地震臨時情報が初めて発表されたほか、本県においても庄内や最上を中心に豪雨災害に見まわれるなど、自然災害の恐ろしさと、災害への「備え」の大切さを改めて認識させられる一年となりました。また、本市において昨年5月に発生した秋葉山林野火災は、山形県内では過去10年で最大となる約122ヘクタールが焼損し、鎮火まで9日間を要する大規模火災となりました。消火にあたってご尽力いただいた消防団や自衛隊、消防関係者の皆様をはじめ、関係各位に改めて深い感謝と敬意を表します。
 さて、昨年の世界情勢を振り返りますと、長引くロシアによるウクライナ侵略や、停戦を挟みながらも続くイスラエルとパレスチナの紛争、北朝鮮の核開発や度重なるミサイル発射、台湾や東アジア地域における中国の軍事的活動の活発化など、世界の軍事的緊張は高まり続けており、我が国の安全保障環境は戦後最も厳しく、難しい状況にあります。
 その一方で、2024年の年間訪日外客数は3,686万9,900人となり、コロナ禍前の2019年を約500万人上回る過去最高を記録するなど、コロナ禍が明けて以降、世界中から日本を訪れる人流が増大しております。また、その消費額も過去最高の8兆1,395億円となるなど、日本経済の成長の牽引役として期待されております。昨年7月、日経平均株価は史上初めて4万2,000円台をつけ、消費や設備投資も堅調な状況にありますが、その陰で、長引く世界的なエネルギー・資材・食料価格等の高騰や円安の影響により、消費者物価指数は高騰を続けております。昨今においては、実質賃金は横ばい状況にあるものの、賃金上昇の対象とならない年金生活者をはじめとして、国民生活を取り巻く環境はより一層厳しさを増しております。このような中で政府は、新しい地方経済・生活環境創生本部を立ち上げ、「地方こそ主役」との発想に基づき、昨年12月24日、「地方創生2.0」を起動させました。これは、官民が連携して地域の拠点をつくり、地域の持つ潜在力を最大限引き出し、ハードだけではないソフトの魅力により、新たな人の流れを生み出し、新技術を徹底的に活用することで、東京一極集中を是正し、多極分散型の多様な経済社会を構築しようとするものであり、国は「令和の日本列島改造」と位置づけ、強力に推し進めようとしております。
 本市におきましては、冒頭で申し上げた秋葉山林野火災を受けて、焼損森林等の調査や周辺市道の環境整備を行ったほか、有識者や関係機関による秋葉山再生連絡会議を毎月開催するとともに、高畠町との共同プロジェクトを推進してまいりました。歴史や人々の思いを大切に、南陽市民の「心の原風景」である秋葉山の復旧、再生を目指して継続的に取り組んでおります。また、市民生活に深刻な影響を与えている燃料、物価高騰対策として、国の補正予算で追加配分された物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、市民税非課税世帯への給付のほか、全市民応援クーポン事業による市民全体への支援や、農家への飼料高騰に対する支援、道路貨物運送業者や地域交通事業者への経営支援、保育施設や障がい者施設等への光熱費高騰などへの支援、ひとり親家庭への追加の給付など、市独自にきめ細やかな支援を迅速に実施いたしました。
 日本は世界有数の災害発生国であります。それはつまり、毎年のように大規模な災害が発生し、昨日まで平穏に暮らしていた人々から家族や家、生活の基盤を奪い去り、時には地域コミュニティを崩壊させてしまう脅威が常に身近に存在するということでもあります。地震はいつどこで起こるのか、未だ予測が難しく、また、地球温暖化に伴う豪雨災害の激甚化や頻発化が明らかであることから、災害への「備え」の重要性は高まるばかりです。住民の生命、身体及び財産を災害から保護することは自治体の責務であり、本市では、平成26年の豪雨災害を契機として、国や県と連携した河川、砂防、雨水排水機能の強化を推進してきたほか、直近では、宮内公民館の建て替えや南陽市民体育館の耐震化による避難所機能の強化を進めるとともに、災害発生時に必要となる飲料水や段ボールベッド等の備蓄も計画的に進めております。また、昨年11月27日には、自治体間連携の取組として、宮城県角田市と大規模災害発生時における相互応援協定を締結するなど、災害への「備え」を充実させてまいりました。しかし、どんなに「備え」があったとしても、想定を超える災害は必ずやってきます。災害による「被害」を減らすためには、市民の皆様一人ひとりが「自分の命は自分で守るという意識」のもと、市や地域の防災訓練やその他の取組に参加いただき、防災・減災意識を高めていただくことが肝要であると考えております。本市は小規模な自治体ではありますが、小さいからこそできる人と地域と行政のつながりを大切にして、自助・共助・公助のそれぞれにおいて市民の皆様と共に真の「備え」づくりに取り組んでまいりたいと考えております。
 本年も、市民の皆様の健康と生活を守ることを第一に、困難や課題を正面から受け止め、将来に先送りせず、公正で持続可能な社会を目指して、全力を尽くしてまいります。

2 市政運営の基本方針

 令和7年度市政運営の基本方針を申し上げます。
 継続する物価高により、市民生活や事業者の経営環境が深刻な影響を受けていることから、市民の暮らしを守ることを第一に、有事の際の防災・減災に繋がる事業に優先して取り組むとともに、地域を支える人材・産業の育成やDX、SDGs、こども・子育て環境の充実など、長期にわたり地域の活力を創造し、持続的な市政の発展につながる施策をさらに推進してまいります。
 令和7年度は第6次南陽市総合計画前期基本計画及び第2期南陽市総合戦略が最終年度となることから、基本目標や重要業績成果指標について評価及び検証を行うとともに、社会や経済情勢、国が掲げる地方創生2.0を踏まえた次期計画の策定に取り組んでまいります。
 また、引き続き市政の柱に「子どもを産み育てやすいまち」・「年をとっても安心して暮らせるまち」・「人が集まり賑わうまち」を掲げるとともに、「身の丈に合った対話のある市政」を基本として、市民が主役となり、何事にもチャレンジする気概に満ちた南陽市を牽引し、市民が幸せを実感できる豊かな社会を目指してまいります。
 以上、まちづくりの方針を申し上げてまいりましたが、市政を運営するにあたっては、将来にわたって持続可能で公正であるかを判断基準とし、健全に財政運営を行うことが基盤となります。今後の数十年、百年先の姿に責任を持つことを念頭に置き、市民の皆様の声に耳を傾け、最小の経費で最大の効果を発揮する施策展開により、新たな行政課題や行政需要にも臨機応変に対応し、市政を運営してまいります。

3 令和7年度予算の編成方針と概況

 令和7年度予算の概況について申し上げます。
 国の地方財政対策では、社会保障関係費や人件費の増加が見込まれる中、地域のデジタル化や地方独自の防災・減災対策、物価高、こども・子育て政策等の様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方交付税等の一般財源総額については、前年度を1.1兆円上回る63.8兆円が確保されました。
 その内訳は、地方税が前年度を2.7兆円上回る45.4兆円が計上され、地方交付税総額については前年度を0.3兆円上回る19兆円が確保された一方で、臨時財政対策債は平成13年度の制度創設以来、初めて発行額がゼロとなり、財源措置の質の改善と総額の確保が図られております。
 本市におきましても、国の施策と歩調を合わせながら、物価高や防災・減災対策に取り組み、また、DXや地方創生の一層の推進を図ることで行政運営の効率化や地域課題の解決を図りつつ、社会情勢の変化と新たな行政需要にも柔軟に対応していかなければなりません。
 令和7年度予算編成におきましては、物価高騰の影響を受け非常に厳しい財政状況に苦慮しつつも、第6次総合計画の基本理念や、社会が求める「防災・減災」「DX」「SDGs」「地域を支える人材や産業の育成」などの取組を着実に推し進めるための予算を措置し、時勢に合わせた費目への重点配分を行いました。
 一般会計では、物価高による行政コストの増加や防災・減災対策事業の推進により、当初予算額は前年比3.2%増の172億1千万円を計上し、過去最大となる積極的な予算編成といたしました。また、特別会計では、前年比1.0%減の75億4,068万6千円を計上したところであります。

4 令和7年度の主要施策

 令和7年度主要施策を総合計画の大綱に沿ってご説明申し上げます。

(1)新たな日常(ニューノーマル)を構築する
 最初に横断的目標「新たな日常(ニューノーマル)を構築する」について申し上げます。
 行政サービスのDXについて、新たに外部デジタル専門人材を任用することで、職員のデジタルリテラシーの底上げやデジタルを駆使して業務改革を牽引できる人材の育成を行い、市全体をデジタル時代の住民ニーズに合った行政サービスを恒常的に提供できる組織へと変革してまいります。また、市消防団に連絡網システムアプリを導入することで、市及び団員間のコミュニケーションを円滑化し、災害時や緊急時の迅速な対応につなげてまいります。また、国が「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」、いわゆる標準化法で定めた税や福祉、介護などの市の基幹20業務について、全国統一の仕様に合わせたシステムを導入することにより、地域社会全体のデジタル化を推進する基盤を整備し、信頼性の高い行政運営と市民サービスの向上につなげてまいります。
 ゼロカーボン目標の実現について、本市では地球温暖化対策実行計画に基づき、これまで公共施設の再生可能エネルギーの導入や学校及び公民館等の照明器具のLED化、電気公用車導入、住宅用太陽光発電システム設置事業費補助など、二酸化炭素排出量削減の取組を進めてまいりました。今後は更に、令和6年度に設立した南陽市ゼロカーボン推進協議会による各種イベントを通じて、市民の皆様や事業者の皆様とゼロカーボン推進を一丸で取り組む機運を醸成してまいります。 

(2)健やかで安心な暮らし・子育てを実現する
 次に基本目標「健やかで安心な暮らし・子育てを実現する」について申し上げます。
 子育て支援について、保育士等宿舎借り上げ支援事業を創設することにより、市内の保育施設等における保育人材の確保を支援し、良好な保育環境を整備してまいります。母子保健と児童福祉の各部門が一体となった「こども家庭センター」を中心に、妊産婦から子育て期までの切れ目のない一貫した相談・支援を行うとともに、親子関係形成支援事業や子育て短期支援事業等の家庭支援事業を実施し、子育て期における虐待を未然に防ぎ、家庭及び養育環境の支援を強化してまいります。引き続き、市内全小学校区で学童保育及び放課後子供教室を運営し、放課後における児童の安全な居場所づくりと、多様な体験を通じた人材育成を地域全体で推進してまいります。また、市内保育施設及び小中学校等で実施する給食提供について、物価高騰に対応するため給食等食材料高騰対策支援事業を拡充し、食材料の高騰による給食費の保護者負担の増加の抑制と給食の質と量を保つ取組を強化するとともに、第3子給食費無料化事業においては完全無償化の対象者を拡大し、多子世帯をより一層支援してまいります。なお、子どもサポートスタッフ1名を地域おこし協力隊として募集し、安全安心な保育環境の維持改善や地域の子ども達の健やかな成長につなげてまいります。
 健康づくりの促進について、令和7年度から「健康なんよう21計画(第3次)」がスタートいたします。「健康寿命の延伸」と「健康格差の縮小」を目指し、生活習慣の改善や生活習慣病の発症・重症化予防により、生活機能の維持・向上を図るほか、ライフコースを踏まえた健康づくりを推進してまいります。また、なんよう健幸ポイント事業の規模を拡大し、新たに1,000人を募集することで、市民の健康づくりの推進はもとより、介護リスクの低減や将来の医療費・介護給付費の抑制、高齢者の外出や社会参画の促進につなげてまいります。
 保健・医療について、令和7年4月1日から、帯状疱疹ワクチンが定期接種に位置づけられることから、該当する高齢者に対し助成を行ってまいります。HPVワクチンの女性への積極的勧奨を引き続き行うとともに、市独自で行っております男性への任意接種費用の助成については、対象者を小学6年生から高校1年生相当の年齢までとして継続し、がん等の疾病予防を図ってまいります。
 障がい児・者の支援について、地域の相談支援の中核的な役割を担う機関として「基幹相談支援センター」を新たに設置し、様々な障がい特性や各種ニーズに対応できる総合的・専門的な相談支援体制の構築を図り、障がいのある方やその家族が住み慣れた地域で安全に暮らし続けられるよう、地域全体で支えあう共生社会の実現に向けて取り組んでまいります。義務教育終了後の青年層への支援を拡充するため、新たにひきこもりや不登校などの相談支援及び居場所機能を有する支援拠点を整備するとともに、アウトリーチ型による包括的な支援を通じて、支援対象者の進学やキャリアアップを後押ししてまいります。

(3)地域に根ざした人材を育てる
 次に基本目標「地域に根ざした人材を育てる」について申し上げます。
 第六次教育振興計画実施の4年目となる令和7年度も、「地域総合型教育」を中核とする本市の教育を、つむぎ・つなぎ、進化・発展させ、あらゆる世代が誇りと生きがいを持ち、安心して暮らしていくことができる社会の実現に向け、高い志を持ち、生涯にわたって学び続け、自立的に生きる人を育んでまいります。
 子どもたちを取り巻く環境の変化は加速度を増す中、地域の宝である子どもたちの豊かな情操と自立的な学習者としての資質・能力を高めていくため、社会教育、学校教育の領域を超え、人との関わりや、自然と触れ合うこと等、本物に触れる体験とともに、ICT機器の効果的な活用等を充実させてまいります。また、引き続き、学習支援員、スクールソーシャルワーカーを配置し、すべての子どもたちが安心して過ごせる環境づくりに努めてまいります。
 5年後、10年後を見通すと、本市の児童生徒数の減少は顕著になってまいります。南陽市の子どもたちにとってより良い学習環境を整え、教育効果を向上させる観点から、保護者や地域のご意見をお聴きしながら、多様な学校の在り方について研究してまいります。
 学校施設について、前述の学校の在り方を踏まえつつ老朽化した施設の修繕工事を計画的に行い、児童生徒が快適に安心して学べる教育環境を整備してまいります。また、給食関連設備の更新や修繕により、安全・安心でおいしい給食を安定的に提供してまいります。
 スポーツ交流について、南陽さわやかワインマラソン大会のハーフマラソン部門を、好評をいただきました昨年度の第25回大会に引き続き今年度も開催するとともに、向山公園野球場セーフティーゾーンの整備や、管理棟の補修工事、市民プールのトイレ洋式化工事などの環境整備を進めることで、スポーツを通じた交流の促進を図ってまいります。
 生涯学習の充実について、新たな宮内公民館(宮内地区交流センター)が今春完成し、4月にオープンいたします。既存の蔵楽と合わせて、地域づくりや人づくり、住民相互の交流の輪が広がる社会教育活動を企画・支援し、地域力を育み高める取組を進めてまいります。魅力ある高校教育への支援事業として、引き続き山形県立南陽高校と地域、市役所が連携した総合的な探究学習を進めるとともに、発足6年目となる南陽高校市役所部の活動を支援し、他地域の高校生との交流事業をより一層深化させることで、地域に定着する人材の育成に取り組んでまいります。シェルターなんようホール(南陽市文化会館)が開館10周年を迎えることから、記念事業として劇団四季などの多彩な興業を行い、より一層市民の皆様に愛され、親しまれる施設を目指してまいります。また、結城豊太郎記念館開館30周年事業として、結城先生ゆかりの方々をパネリストに迎えた座談会形式の講演会を開催し、故郷南陽を深く愛した結城先生の生涯や人柄を、広く知っていただく機会としてまいります。

(4)力強い産業の基盤をつくる
 次に基本目標「力強い産業の基盤をつくる」について申し上げます。
 産業の付加価値を高めるため、企業立地奨励金により市外からの企業の誘致や市内企業の新たな工場等への投資を促進し、雇用の場の確保を図ってまいります。新たな産業団地の整備については、引き続き需要に応じた検討を進めてまいります。また、新規創業者について、赤湯駅交流ラウンジにて創業アイディアの相談を受け、南陽市商工会と連携した支援を行ってまいります。新たに中心商店街の空き店舗等を活用した事業の支援を行うことで、賑わいの創出と地域経済の活性化を図ってまいります。
 後継者を育てるについて、市内へ就職、移住する東京圏の大学生・大学院生に対して、就職面接の交通費や転居費用を支援することで、若者の地元への就職を促進してまいります。
 本市特産のぶどうについて、ワインの原料となるデラウェアや醸造用ぶどうの収量確保に向けた園地継承を支援することで、高齢化や後継者不足による耕作面積の減少を抑制してまいります。
 獣害対策として、電気柵設置の補助や猟友会と連携・協力した有害鳥獣の捕獲に継続して取り組むとともに、クマ捕獲の報酬を増額することで、全国的に増加傾向にあるクマ被害に対応してまいります。
 地域の幅広い関係者で話し合いを行い、農地を誰がどう使っていくか農地の未来を描く「地域計画」を令和7年3月に策定し、地域農業の維持・発展のため、幅広い担い手の確保と農地集約に取り組んでまいります。
 地域おこし協力隊として、南陽のワイン産業を未来へつなぐワイナリー創業希望者を1名、農山村地域における地域資源を活用した地域活性化支援員を1名、中山間地域におけるスマート農業支援員を1名、新たに募集し、付加価値の高い産業における後継人材の育成と農山村地域の活性化につなげてまいります。

(5)強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる
 次に基本目標「強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる」について申し上げます。
 災害に強いまちをつくるについて、南陽市自主防災組織連絡協議会を通じ、各地区自主防災組織の活動と組織間の連携による地域防災力の一層の充実強化に努め、「自らの命は自ら守る」ための自助の意識啓発と、共助の精神の醸成、公助の機能強化に取り組み、「自助」「共助」「公助」の連携の輪を広げてまいります。携帯型無線機や背負い式消火器具などの消防団装備を充実させることで、災害現場等における安全確保や防災・減災につなげてまいります。ハザードマップを更新し、上無川や前川、北川などの中小河川の浸水想定区域や、新たな土砂災害の発生するおそれのある箇所、市が独自に調査した内水浸水想定区域を盛り込むことにより、避難する際の市民の皆様の安全や地域の防災・減災対策につなげてまいります。山形県防災行政通信ネットワークや緊急速報メール連携システムの更新を行うとともに、トイレカーを導入することにより災害対応力の向上を図ってまいります。最上川流域の浸水被害の軽減を図るため、国や県、関係機関と連携し「最上川水系( 置賜地域 )流域治水プロジェクト」を推進してまいります 。大きな水害を経験した全国の市区町村長の意見交換等の場である「水害サミット」の世話人代表として、全国の自治体と効果的な水害対策を共有するとともに、地域間の連携を深めてまいります。また、郡山地内の雨水幹線事業及び梨郷地内の浸水対策事業を計画的に進めることで、豪雨の際の浸水被害の軽減を図ります。
 公共交通について、山形鉄道フラワー長井線及び市内循環バス3路線の維持と安全運行に努めるとともに、沖郷地区の地域公共交通「おきタク」が持続可能な公共交通となるよう運行協議会を支援してまいります。地域交通に関するマスタープランとして、新たに地域公共交通計画を策定することで、今後の本市の公共交通の在り方について検討を進めてまいります。
 交通インフラの整備について、市道六角町富貴田線と主要地方道米沢南陽白鷹線の接続については、国の支援策である都市構造再編集中支援事業を活用し、令和8年度供用開始を目指して整備を進めてまいります。一般県道赤湯停車場線及び一般県道赤湯停車場大橋線の整備促進、主要地方道山形南陽線板宮工区の早期完成について、山形県に対し強く要望してまいります。東北中央自動車道の効果を一層高めるため、市内へのスマートインターチェンジの設置実現に向けた調査・検討と、関係機関への要望を進めてまいります。
 快適な居住環境をつくるについて、空き家対策として空き家の後片付け費用に対する補助により空き家バンクへの登録を促進するとともに、老朽危険空き家除却支援事業を継続し、さらに、所有者又は相続人による対応が見込めない危険度の高い空き家に対しては行政代執行も視野に入れ、安心して暮らすことのできる住環境の確保に努めてまいります。花見町古堤について、地元住民や関係機関との調整を図りながら、住民のいこいの場となるよう水辺空間を整備してまいります。雪対策については除排雪予算を増額し、「きめ細やかな除雪」や「やさしい除雪」に引き続き取り組むとともに、効果的に除排雪を行うことで冬季間の通行の安全を確保してまいります。また、飼い主のいない猫や適正に飼養されていない猫の不妊及び去勢手術費用等の助成について、ガバメントクラウドファンディングを活用しながら支援を実施することにより、地域の人と動物が共生できる環境づくりを進めてまいります。
 水道事業について、持続可能な事業運営と水需要に応じた料金負担の公平性を高めるため、水道料金を令和7年6月1日より「用途別料金体系」から「口径別料金体系」へ変更いたします。また、災害時も重要施設において水道と下水道両方の機能を確保できる強靭な上下水道システムを構築するため、令和7年1月に策定いたしました「上下水道耐震化計画」により、上下水道施設の耐震化を計画的に推進するとともに、上下水道事業の運営基盤強化・効率化を図るため、広域連携、上下水道事業DX、ウォーターPPP等の官民連携について検討してまいります。
 下水道事業について、下水道未整備地区への管渠整備と既設老朽管渠の改築更新を進めてまいります。
 防犯・交通安全について、通学路や生活道路の防犯対策と交通事故防止を図るため、LED防犯灯への補助を継続してまいります。運転に不安のある高齢者の運転免許証自主返納を促進するため、令和7年度から支援内容を拡充し、交通事故の減少を図ってまいります。

(6)自然の豊かさを守る
 次に基本目標「自然の豊かさを守る」について申し上げます。
 自然環境を守るについて、昨年発生した秋葉山林野火災からの復旧につきましては、国・県ほかのご支援を仰ぎ、また再生連絡会議のご意見を十分尊重したうえで、焼損被害が特に激しい区域を対象に、被害木の除去及び市民皆様と協働した植栽を行うなど、着実な森林再生に向け取り組んでまいります。丸堤について、繁茂したヒシの除去を行い、水質や水辺環境の改善を進めるとともに、白竜湖のヒシについても引き続き注視し、自然や景観の保全に努めてまいります。
 資源リサイクルについて、資源ごみの売却収入を財源とする「元気がでるまちづくり交付金事業」による地域コミュニティの環境意識の向上をはじめ、ごみ分別の周知徹底と使用済み小型家電回収事業のほか、令和7年度から実施する生ごみ処理機等設置補助事業の拡充などにより、市民一人ひとりの行動変容を促し家庭ごみの更なる減量化に取り組んでまいります。
 森林環境譲与税を活用した取組として「意向調査」に着手し、森林経営管理制度の推進と、市内森林整備や木材の利用促進等を図ってまいります。

(7)人がつながりまちを育てる
 次に基本目標「人がつながりまちを育てる」について申し上げます。
 令和4年6月にオープンした「赤湯温泉 湯こっと」は、赤湯温泉の魅力を発信するだけでなく、バリアフリー観光を推進し、障がいのある方や介護が必要な方も楽しめる健康増進と交流の場となるよう運営してまいります。
 ラーメン課プロジェクトは、人気漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボしたラーメンカードラリー等を引き続き実施し、全国に南陽市をPRするとともに、ラーメンを主役にした地域活性化を進めてまいります。
 昨年リニューアルオープンいたしました赤湯駅交流ラウンジは、観光客や学生をはじめ、多くのお客様にご利用いただいており、デジタルサイネージを活用した観光案内や中高生を中心にしたICT教育などを拡充させることで、赤湯駅を中心とした賑わいの創出と交流人口の増加を図ってまいります。
 健全な財政運営について、地域活性化に寄与するふるさと納税のより一層の拡大を図るとともに、ガバメントクラウドファンディングや企業版ふるさと納税を積極的に活用し、財源の確保と官民連携の取組を進めてまいります。

(8)発信力のあるまちづくりを進める
 次に基本目標「発信力のあるまちづくりを進める」について申し上げます。
 令和7年度はインバウンドを含めた観光需要の増大が見込まれ、交流人口の拡大が期待されます。地域資源のさらなる磨き上げを行うとともに、海外へのプロモーションについても、台湾を中心に地域連携DMOなどとの広域連携の強化や充実を図ってまいります。
 情報発信について、市民の皆様が必要とする情報を、ホームページやSNS等で広く効果的に発信するとともに、関係人口拡大に向け、民間事業者が提供する情報配信サービスを利用し、市内外に戦略的な広報を展開してまいります。また、地域おこし協力隊事業を継続し、農業を中心とした情報発信の活性化を図るとともに、6次産業化に意欲のある事業者が全国的な見本市等へ出店する際の支援を行うことで、本市の優れた農産品や農産加工品のPRを図ってまいります。
 観光資源について、烏帽子山公園北側見晴らし台周辺について、多くの皆様に桜を楽しんでいただけるよう、桜の植樹等の整備を進めることで、桜の名所としての魅力をさらに向上させてまいります。烏帽子山公園のライトアップ機材を増設し、桜、紅葉、雪まつりなど、四季折々の様々な場面で活用を図り、多くの方々に楽しんでいただける取組を進めてまいります。
 双松バラ園について、花壇の改修やバラの樹勢回復を図ることで、バラ園の魅力を向上させ、誘客の促進を図ってまいります。南陽市所有のイザベラバード関連資料を蔵楽に移設し、後世に引き継いでまいります。熊野大社や南陽スカイパークなど観光需要の高い観光スポットと、ワインや日本酒、ラーメン、フルーツなどの食をテーマとした観光コンテンツを結び付け、さらなる魅力向上を目指してまいります。既存の資源と開湯930余年を数える赤湯温泉との連携を図り、体験、宿泊を組み込んだ着地型コンテンツの作り込み等を行ってまいります。

5 結び

 今年は戦後80年、そして昭和の元号で100年に当たる節目の年となっておりますが、「昭和」という元号は、漢学者の吉田増蔵が考案し、1926年12月、枢密院全員審査委員会で採択決定されました。
 「昭和」は、五経の一つで中国最古の歴史書「書経」の「堯典」にある一節「百姓昭明 協和万邦(百姓昭明なり、万邦を協和す)」から2文字をとって名付けられたものです。この一節の意味するところは、「国民の平穏な暮らしと世界各国の共存共栄」であり、第1次世界大戦や関東大震災を経験した大正時代から、新たな時代に対する強い願いの現れでした。その意味するところとは裏腹に、その後、日本は戦争へと突き進み、敗戦からの復興や高度経済成長、バブル崩壊からの失われた30年、そして、未曽有のパンデミックであるコロナ禍を経て、昭和100年である令和7年に至っております。
 世界各地で紛争が多発し、台湾有事など日本近隣も含めた世界秩序の危機が叫ばれ、日本においては災害が激甚化、頻発化する「令和」の時代にあって、「昭和」の言葉が意味する国民の平穏と世界平和への願いは、より一層共感を呼び、人々から強く求められるものだと考えます。
 毎年、施政方針において、市政運営の方針と主要施策を申し述べておりますが、それらは平時であってこそ可能な事柄であります。
 戦争や災害の惨禍に襲われることなく、令和7年度が穏やかで過ごしやすい年となるよう強く願いながら、私は今年度もまちづくりの主役である市民の皆様とともに、全身全霊で市政を運営してまいります。
 市民の皆様ならびに議員各位におかれましては、より一層のお力添えを賜りますよう、心からお願い申し上げます。

(更新日:令和7年3月3日)