地震の心得
教訓1 「安全を過信するな!」
自分の家がつぶれるような事態は、だれも想像したくないことです。しかし、阪神淡路大震災ではおよそ21万戸もの家屋が倒壊・焼失しています。建設省の調査によれば、古い家屋ほど破損が著しく、とくに1981年の建築基準法施行令改正前に建てられた家屋の被害が大きいという結果がでています。木造家屋はもちろん、マンションやビルも老朽化しているものは油断できません。できるだけ早めに家屋の安全度をチェックし、問題があれば修理や補強をしておきましょう。
教訓2 「逃げ場となる空間を確保しろ!」
地震の際は、最初の数分間の行動が生死の分かれ目になることがあります。大きな揺れを感じたら、まず安全な場所で身を守ることを最優先しましょう。阪神淡路大震災では「どこへ逃げればいいかわからなかった」という人が数多くいました。ふだんから家具や電気製品などの配置を工夫し、逃げ場となる安全なスペースを確保しておきましょう。部屋が狭い場合や部屋数が少ない場合は、あまり使わない家具を思い切って整理することも検討してみてください。
教訓3 「家具の転倒・落下を防げ!」
阪神淡路大震災では、倒れてきたタンスの下敷きになったり、落ちてきた照明器具のガラスなどでけがをする人が続出しました。「家の中の立っている物はすべて倒れた」「ガラスが雨のように降ってきた」との証言もあります。とくに危険なのは、背が高くて奥行きのない家具や電気製品など。転倒防止用の金具などでしっかりと固定しておきましょう。また、照明器具や棚の上の物などは、チェーンやひもなどで固定し、落下を防いでください。
教訓4 「地域の人々ともっとふれあえ!」
「家の下敷きになった人を近所の人たちが救出した」「みんなでバケツリレーをして延焼を食い止めた」阪神淡路大震災では、こうした地域ぐるみの防災活動が被害の拡大を防ぐうえで大きな成果をあげたと報告されています。災害時にもっとも頼りになるのは、家族であり、近所に住む人々です。地域コミュニケーションをもっと重視し、ふだんから自主防災活動などに積極的に参加するようにしましょう。また、阪神淡路大震災の犠牲者の大半はお年寄りでした。こうした災害に弱い人々(お年寄り、子供、心身に障害のある人、病気の人、外国人など)にやさしいまちづくりをめざしたいものです。
教訓5 「日頃の備えは万全を期せ!」
大きな地震の時は、電気・ガス・水道・電話などのライフラインが寸断されたり、避難生活を余儀なくされることもあります。そんなときに備えて、ふだんから家庭や職場に非常持ち出し品を常備しておきましょう。非常食、水、懐中電灯など、少なくとも3日程度は自活できるように準備してください。いざというときは、すぐに持ち出せるように、あらかじめリュックなどに入れておくとよいでしょう。
わたしはこうして助かった!
証言1 「激しい揺れだったので、とっさに布団にもぐった。棚から花瓶などが落ちてきたが、布団のおかげでケガをせずにすんだ。」
大きな揺れの場合は身の安全確保が第一。テーブル、机、ベッドの下などにもぐり、座布団やまくらなどで頭を保護する。
証言2 「揺れと同時に居間のタンスや鏡台が倒れたが、寝室には大きな家具がなかったので助かった。」
家具の配置を工夫し、家の中に逃げ場としての安全なスペースをつくる。とくに寝室にはできるだけ家具を置かない。あわせて家具の転倒防止対策を。
証言3 「玄関のドアが変形して開かなくなり、部屋の中に閉じ込められた。幸い日曜大工のバールがあったので、窓の格子を壊して脱出した。」
身の安全が確保できたら、揺れの合間をみてドアや窓を少し開けて脱出口を確保する。とくにマンションや団地の鋼製ドアは要注意。
証言4 「家が倒壊して下敷きになった。身動きができず半ばあきらめかけていたところ、心配してかけつけてくれた近所の人たちに救出された。」
大きな災害のとき、もっとも頼りになるのは家族や近所の人々。ふだんから地域の人々とのふれあいを密にする。
証言5 「暗闇の中での揺れだったが、手近に懐中電灯があったのでケガをすることなく脱出できた。」
夜の災害や停電に備えて懐中電灯は必需品の一つ。明かりは不安感をやわらげる効果もあるので必ず常備を。
証言6 「揺れと同時に、とっさに玄関にあった息子のバスケットシューズをはいて家を脱出した。結果的には、その靴のおかげで足にケガをせずにすんだ。」
避難路は危険物に満ちているので、できるだけ底の厚い、丈夫な靴をはく。職場のロッカーにも、はき替え用の靴を常備する。
証言7 「エレベーターが間に合わず、階段を使って避難した。あとでエレベーターに乗った人が中に閉じ込められたことを知った。」
災害時は、停電などでエレベーター内に閉じ込められるおそれがある。エレベーターには乗らず、必ず 階段を使って避難する。
証言8 「火災が発生したが、近所の人たちが集まり、みんなでバケツリレーをしてなんとか延焼を食い止めた。」
一人ひとりがバラバラに対応するより、協力し合って防災活動に当たるほうが効果的。日頃から地域活動を重視し、自主防災組織にも進んで参加する。
証言9 「避難する際、玄関に避難先のメモを残しておいた。そのため、離れて住んでいる息子や見舞いにきてくれた親戚ともすぐに落ち合えた。」
避難するときは、目につきやすい場所に避難先を書いたメモを残す。その準備として、非常持ち出し袋の中に紙とマジックを入れておく。
証言10 「被災直後は食料が手に入らず困った。幸い冷蔵庫の中にハムやチーズなどが少し残っていたので、それらでなんとか飢えをしのいだ。」
イザというとき困らないように、少なくとも3日分の非常食を準備しておく。携帯に便利で、保存がきき、調理の手間がいらないものを。
証言11 「震災後、何日も断水の日々が続いた。幸い風呂の水が残っていたので、水洗トイレやちょっとした洗濯などにたいへん重宝した。」
ふだんから風呂や洗濯機の水は抜かず、残しておく。さらに、ポリタンクなどに非常持ち出し用の水を常備する。
証言12 「愛用していた眼鏡は倒れた家具の下敷きになって壊れた。しかし、ケースに入れておいた予備の眼鏡が無事だったので助かった。」
眼鏡、入れ歯、補聴器などは意外に盲点。あらかじめ予備のものをつくり、非常持ち出し袋の中に入れておく。
証言13 「一時期、「大きな余震がくる」などのデマ情報が飛び交ったが、ラジオを聞き続けていたので惑わされずにすんだ。」
ラジオは正確な情報を得るために欠かせない。ふだんから予備の乾電池とともに非常持ち出し袋の中に入れておく。
証言14 「家の電話が不通になったので公衆電話を何回か使った。その際、たまたまズボンに入っていた10円玉がたいへん役に立った。」
災害時は公衆電話以外は使えなくなる可能性がある。あらかじめ持ち出し用の現金の中に10円玉などの小銭も用意しておく。
防災をテーマに家族会議を
家族一人ひとりの役割分担
日常の予防対策上の役割と地震が起きたときの役割の両方について決める。寝たきりのお年寄り、病人 小さな子供がいる場合は、だれが保護を担当するかなども話し合う。
家屋の危険箇所チェック
家の内外をチェックして危険箇所を確認し合う。放置できない危険箇所については、修理や補強の方法 についても話し合う。
家具の安全な配置と転倒防止対策
家具の配置換えによって家の中に安全なスペースをつくれないか工夫する。また、家具の転倒や落下を 防ぐ方法を考え、そのための新製品などがあれば教え合う。
非常持ち出し品のチェックと入れ替え
家族構成を考えながら必要な品がそろっているかをチェックする。定期的に新しいものと取り替える必要が あるもの(使用期限のある非常食、水、乾電池など)は、だれが担当するかなども話し合う。
地震時の連絡方法や避難場所の確認
家族が離れ離れになったときの連絡方法や避難場所を確認する。避難コースの危険箇所についても 話し合い、できれば休日などを利用し、散歩を兼ねてみんなで下見をしておく。
地震が起きたときのシミュレーション
できるだけ具体的な地震(たとえば阪神淡路大震災など)を想定し、そのとき各自がどう行動するかをシミュレ ーションしてみる。心構えが十分できていれぱ゛、イザというときにあわてないですむ。
家の内外の安全チェックを
地盤
埋め立て地、低湿地、軟弱地盤(深いほど危険)の地域、液状化の可能性のある砂質地盤は要注意
老朽度
老朽化しているものは要注意。腐っていたり、シロアリに食われているものは危険。建物の北側、台所や 風呂場回りの土台をドライバーなどでつついてチェックを。
建物の形
凸凹の少ない整形の建物は比較的安全。不整形の建物は地震に弱い傾向がある。
筋かい
壁の中に筋かいがあるものは安全。ないものは注意を。
基礎
コンクリート造りの基礎で、縦と横に鉄筋が入っているものは比較的安全。鉄筋が入っていないものや 石積み、ブロック積みの基礎は要注意。
壁の量
壁の量が多いものほど安全。少ない場合は要注意。
家具を安全に配置するコツ(家具の配置を工夫し、転倒防止策を)
家の中に逃げ場としての安全な空間をつくる。
部屋が幾つもある場合は、人の出入りが少ない部屋に家具をまとめて置く。無理な場合は、少しでも 安全なスペースができるよう配置換えする。あまり使わない家具は、思い切って捨てることも考える。
寝室、子供やお年寄りのいる部屋には家具を置かない。
就寝中に地震に襲われると危険。子供やお年寄り、病人などは逃げ遅れる可能性がある。また、 人の通り道となる玄関や廊下にも置かないほうが無難。やむをえず置く場合も、倒れにくいものだけ にし、しっかりと固定する。
畳の上に置くのはさけ、できるだけ板の間に置く。
畳の上より板の間のほうが倒れにくい。やむをえず畳の上に置く場合は、家具の下に板を敷く。 また、すべりやすい家具には脚にすべり止めのゴムキャップなどをつける。
壁や柱にぴったりつけて置く。
家具と壁や柱の間に遊びがあると倒れやすい。家具の下に小さな板などを差し込んでバランスをとりなが ら、壁や柱に寄りかかるように固定する。窓ガラスなど割れやすいものを背にして置くのは危険。
これだけは必要!持ち出し品(非常持ち出し袋にいれたいもの)
避難するとき最初に持ち出すもの。あまり欲張りすぎないことが大切。重さの目安は男性で15kg、女性で10kg程度。
貴重品
現金(公衆電話用の10円硬貨もあると便利)、証書類、通帳類、身分証明書、健康保険証、免許証、 印鑑など
携帯ラジオ
小型で軽く、FMとAMの両方聴けるものが望ましい。
照明器具
懐中電灯(できれば1人に1つ。予備電池も忘れずに)、ろうそく(太くて安定のよいものを)。
救急薬品
絆創膏、ガーゼ、包帯、三角巾、体温計、消毒薬、解熱剤、胃腸薬、かぜ薬、鎮痛剤、目薬、とげ抜き など。持病のある人は常備薬も忘れずに。
非常食品
乾パンや缶詰など火を通さないでも食べられるもの、水(ミネラルウォーター)。水筒、紙皿、紙コップ、 ナイフ、缶切り、栓抜きなども。
衣類・その他
下着、上着、靴下、ハンカチ、タオル、ティッシュペーパー、ヘルメット(防災ずきん)、ライター(マッチ)、 ビニールシートなど。赤ちゃんがいる場合は、粉ミルク、哺乳びん、紙おむつなども。
(更新日:平成25年3月12日)