南陽市土地利用マスタープラン
1 土地利用マスタープラン策定の趣旨
土地利用計画とは、市民、企業及び行政が所有するそれぞれの土地について、その所在する地域の自然的、社会的、経済的及び文化的諸条件に応じて、適正かつ合理的な土地利用を図るために策定する将来目標・計画であり、地域住民が自主的に共有し得ていた自然と生活共同体に係わる「共通のモノサシ=土地利用の地域管理のためのルール」です。
土地利用計画の目的は、土地が、現在及び将来における市民のための限られた貴重な資源であること、市民の諸活動にとって不可欠の基盤であること、その利用が他の土地の利用と密接な関係を有するものであることなどを鑑み、市民、企業及び行政の個々の権利・利害を踏まえながら、公共の福祉を優先させた将来目標・計画であり、もって、市民福祉の向上、豊かな地域社会の建設、また地域経済の健全な発展に寄与することを目的とします。
また、土地利用計画の役割は、大きくは次の二つに整理されます。
一つ目は、土地利用の将来像を示すことであり、社会的ルール(枠組み)と公共的な土地利用整備事業のための指針となります。二つ目は、立地審査(区域審査)と開発基準(開発条件の設定)の開発管理の基準となるものです。現在、本市では法指定区域として、都市計画区域、用途地域、農業振興地域農用地区域及び保安林等がありますが、こうした法による土地利用のルール化は市域全体で行われておりません。特に、集落等の白地地域では土地利用のルール化が不十分な状況にあり、様々な問題を生じています。
これらを踏まえ、今回、市民の皆さんと市が協働で策定する「南陽市土地利用マスタープラン」では、南陽市全域を対象に、個々の土地利用のルール・枠組みとなり本市土地利用の指針となる「土地利用ゾーン」と、第4次南陽市総合計画及び地区まちづくり白書に掲げる将来目標・ビジョンの実現に向けて土地利用の視点からみたまちづくりの方針・方向を示す「開発・保全エリア」の二層式の計画を策定していきます。
2 土地利用の基本方向
(1)まちづくりの目標
まちづくりは「市民の暮らしづくり」です。
南陽市では、市民の安全な暮らし、ライフサイクルに応じた安心な暮らし、そしてうるおいのある暮らしを目指して、まちづくりの目標を次のように定めます。
まちづくりの目標 安全で安心なうるおいのあるまち・南陽
(2)土地利用の基本方向
土地は、豊かな地域社会の建設と快適な市民生活を営む環境を創出する基盤であり、市民のための限られた資源です。従って、土地利用に当たっては、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の社会的、経済的、文化的諸条件に配慮しながら、市民の健康で文化的な生活環境の確保と市土の均衡ある発展に向けて、「自然的土地利用と都市的土地利用の調和」、「豊かな自然環境の保全と共生」及び「中心市街地の活性化」を総合的かつ計画的に進めていくものとし、土地利用の基本方針とその基本的な考え方及び方向を次のように定めます。
3 土地利用マスタープラン
(1)土地利用マスタープラン策定の基本的な考え方
これからの本市の土地利用の指針として、市民と行政の協働のもと、合意形成を図りながら、以下に示す6点を基本的な考え方とし、ともに共有できる将来土地利用構想(マスタープラン)を策定していきます。
(2)土地利用区分の設定
本計画では、個々の土地について適正な利用を図るためのルール・枠組みとなる「土地利用ゾーン」と、第4次南陽市総合計画及び地区まちづくり白書に掲げる将来目標・ビジョンの実現に向けて土地利用の視点からみた重点的なまちづくりの方針・方向を示す「開発・保全エリア」からなる二層式の将来土地利用構想を策定していくものとし、前記の基本的な考え方に基づき、「土地利用ゾーン」7区分、「開発・保全エリア」7区分の計14の土地利用区分を設定します。
図 土地利用区分設定の流れ
土地利用ゾーン
ゾーン名 | 対象区域及び現況特性 | 将来土地利用の方針 |
水源涵養保全ゾーン |
・ 吉野川上流部の森林地域(国有林及び周辺) ・ 織機川上流部の森林地域(保安林及び周辺) |
・ 本市の水辺軸である吉野川及び織機川の水源涵養林として、また、次代へと引き継ぐべき貴重な自然環境地域として、都市的土地利用を禁止し、森林地域の中でも特に重点的に維持・保全を図る |
森林環境保全ゾーン | ・ 上記の水源涵養保全ゾーンを除いた森林地域(大半が地域森林計画対象民有林で、県南県立自然公園区域を含む) |
・ 木材生産等の経済的機能に加えて、生態系保全や国土保全、水源涵養、自然環境保全、保健休養等の公益的機能にも十分配慮しながら、その維持・保全を基本とした土地利用を図る ・ 一部では、森林生産や森林保養・レクリエーション、あるいは適正な範囲での土砂採取の開発等、市民生活や産業と自然との共生が可能な森林活用を図る |
丘陵果樹保全ゾーン | ・ 赤湯、中川、宮内及び金山地区内のぶどう畑やリンゴ園を主体とする丘陵地の果樹園及びこの中に点在する既存集落 |
・ 稲作と並ぶ本市農業の中心として、また、南陽らしい風景・景観の構成要素や本市が誇る観光資源として、その維持・保全に努めるとともに、必要な基盤整備を進める ・ この中に点在する集落については、これらと調和・共生する集落として、必要な環境整備を図る |
自然環境共生ゾーン | ・ 中川、漆山、吉野、金山及び梨郷地区内に形成されている既存集落及びその周辺地域 |
・ 森林や田園等、周囲の優れた自然環境の維持・保全を図りながら、これらと調和・共生する里山集落及び中山間集落として、緑豊かな環境整備を図るとともに、良好な里山景観の維持・形成に努める ・ 各地区が誇る貴重な地域資源周辺における環境整備を進め、特色ある地域づくりを展開する |
田園環境共生ゾーン |
・ 本市南部に広がる田園地帯(水田、果樹園等)及びこの中に点在する既存集落 ・ 国道13号東側の集団性の高い田園地帯 |
・ 水田や果樹園等、大地の恵み豊かな田園環境の維持・保全を基本に、必要な農業基盤の整備を進める ・ この中に点在する集落については、これらと調和・共生する田園集落として、市街地部では実現が困難なゆとりのある環境整備を図るとともに、良好な田園景観の維持・形成に努める |
水辺親水ゾーン |
・ 最上川、吉野川、織機川、上無川、前川等 ・ 赤湯地区の白竜湖、沖郷地区の丸堤や古峯堤等 |
・ 氾濫を未然に防止し、周辺地域における安全性の確保と農用地の生産性向上に向けて、必要な改修・整備を促進するとともに、市民の憩いの場となり、水辺を身近に実感できるうるおい豊かな水辺空間の整備を図る ・ 白竜湖については、本市のシンボル景観としての保全を積極的に進める |
市街地ゾーン | ・ 概ね現行の用途地域に相当する区域で、住宅や店舗、事務所、宿泊施設、工場及び公共公益施設等、各種施設・機能が集積する市街地 |
・ 低未利用地の利活用を促進する。 ・ 用途地域の指定に対応した計画的かつ合理的な都市的土地利用を促進するとともに、各種都市機能集積の拡充を図る ・ 道路、公園及び下水道等、都市基盤施設の整備を図る |
開発・保全エリア
エリア名 | 対象区域及び現況特性 | 将来土地利用の方針 |
中心市街地形成エリア |
・ 赤湯地区の赤湯温泉街 ・ 宮内地区の宮内門前町(熊野大社・双松公園~宮町、新町、南町、旭町及び本町通り周辺~公立置賜南陽病院周辺) ・ 沖郷地区の赤湯駅周辺 |
・ 赤湯温泉街と宮内門前町については、本市の顔・中心を成す拠点として、商業や観光等各種機能の拡充を図るとともに、温泉街や門前町といった地区の特性を生かした歴史・文化の趣を感じられる街並み・環境整備を重点的に進める ・ これらに加え、宮内地区では、公立置賜南陽病院を中心に、福祉施設の集合化を図るなど、本市の福祉エリアとしての整備を進める ・ 赤湯駅周辺については、駅前広場の整備、駅西地区の低未利用地の有効利用等、本市の中心市街地として相応しい市街地整備を図る |
交流促進地域形成エリア | ・ 赤湯、宮内、漆山及び沖郷地区にかけての市街地(現行用途地域)と新潟山形南部連絡道路(国道113号赤湯バイパス)の間の田園地域 |
・ 赤湯地区では、稲荷森古墳を生かした景観形成など、うるおいのある環境整備を図る ・ 宮内、漆山及び沖郷地区では、田園環境との調和・調整を図りながら、広域交流施設の整備や西工業団地の拡張整備を進めるなど、本市の新たな骨格となる高規格幹線道路の整備効果を生かした新たな開発・整備を展開する ・ こうした新たな開発・整備を適切かつ効果的に進められるよう、市内に4か所設置予定のインターチェンジ周辺におけるアクセス道路等の整備を促進する |
ふるさと景観保全・形成エリア | ・ 丘陵地の果樹園やこの周囲に広がる森林、田園等、自然的土地利用を主体とする赤湯地区から中川地区にかけての国道13号両側一帯 | ・ 斜面地のぶどう畑や秋葉山及び十分一山の森林の緑、この裾野に広がる広大な田園地帯、白竜湖、そしてスカイパークから大空へと飛び立つハング・パラグライダーなど、本市を代表し、象徴する「ふるさと景観」を形成する地域として、各種資源・施設の保全・整備を重点的に進める |
フルーツ・レクリエーション交流エリア | ・ 赤湯から宮内及び金山地区にかけての吉野川東部の果樹園や森林を主体とする丘陵地 | ・ 中央花公園やハイジアパーク、向山公園等のスポーツ・レク施設、上野フルーツランドや金山りんご園等の観光果樹園、秋葉山の市民の森、そして吉野川等、豊富な資源・施設の保全・整備と相互の連携強化・ネットワーク化を進め、魅力の高い観光・交流地域の形成を図る |
おりはたの里形成エリア | ・ 夕鶴の里及び珍蔵寺周辺に形成される漆山・池黒の市街地・集落 | ・ 北側に連なる緑の山並みを背景に、夕鶴の里や珍蔵寺、織機川、まゆ蔵等の歴史・文化資源を守り、生かしながら、民話のロマン漂うおりはたの里づくり・環境整備を図る |
竜樹の里形成エリア | ・ 経塚山から龍樹山、漆山地区へと連なる高さ150~200m程度の山々とこの南斜面の裾野に連担する集落 | ・ 梨郷地区のシンボルである龍樹山を中心に、森林の緑の保全を基本としながら、この緑をより身近に感じられるよう遊歩道(経塚山・龍樹山~南陽市総合公園)整備等による緑の活用とネットワーク化を図るとともに、こうした緑と一体となった里山集落ならではの環境整備及び景観の維持・形成を図る |
地域資源活用交流エリア | ・ 金山及び吉野地区中央部を南北に通り、地区の骨格としての役割を担う吉野川及び(主)山形南陽線沿い |
・ 点在する数多くの自然・歴史資源を活用した地域の活性化を図るために、ハードとソフトが一体となる農山村交流地域の形成を図る ・ 個性・景観づくりとして、(主)山形南陽線沿道での花いっぱい運動や桜の植樹に努める |
表 土地利用ゾーン区分と土地利用・法規制及び地区との対応
土地利用及び法規制 | 地区区分 | ||||||||||||||||
農地 | 森林 | 河川等 | 宅地 | 赤湯 | 中川 | 宮内 | 漆山 | 吉野 | 金山 | 沖郷 | 梨郷 | ||||||
全体 | 農振農用地 | 果樹園 | 全体 | 保安林 | 全体 | 用途地域 | 集落 | ||||||||||
水源涵養保全ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||||||
森林環境保全ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||||
丘陵果樹保全ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
自然環境共生ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||||
田園環境共生ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
水辺親水ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
市街地ゾーン | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
表 開発・保全エリアと地区のビジョンとの対応
地区区分 | 赤 湯 | 中 川 | 宮 内 | 漆 山 | 吉 野 | 金 山 | 沖 郷 | 梨 郷 | |
地区のビジョン | 温泉観光と広域交流のまち | 果樹と福祉と観音の里 | 歴史と文化にふれあえるまち | 民話のロマン漂うおりはたの里 | 北へもえる奥南陽・桜街道のまち | 自然を生かしたふるさと | 交流と居住機能を備えた田園都市 | 龍樹の里 | |
開発・保全エリア | 中心市街地形成エリア | ○ | ○ | ○ | |||||
交流促進地域形成エリア | ○ | ○ | ○ | ○ | |||||
ふるさと景観保全・形成エリア | ○ | ○ | |||||||
フルーツ・レクリエーション交流エリア | ○ | ○ | ○ | ||||||
おりはたの里形成エリア | ○ | ||||||||
竜樹の里形成エリア | ○ | ||||||||
地域資源活用交流エリア | ○ | ○ |
(3)土地利用マスタープラン
前記の土地利用区分に基づき策定した本市の土地利用マスタープランは次図のとおりです。
今後は、この土地利用マスタープランを基本として、市民の皆さんと行政が協働で、持続的発展可能な土地利用を進めるとともに、適正な規制・誘導や所有から利用への転換を図り、「安全で安心なうるおいのあるまち・南陽」の実現及び各地区のビジョンの具体化を目指していきます。
図 土地利用マスタープラン(下記図の凡例は(2)土地利用ゾーンの表を参照ください。)
なお、南陽市国土利用計画(第4次)の策定に伴い、本計画の 「土地利用現況図」及び「土地利用ゾーニング図」を修正しました。修正した「土地利用現況図」及び「土地利用ゾーニング図」については、右の関連ファイル「土地利用現況図」及び「土地利用ゾーニング図」をご覧ください。