令和6年度施政方針
施政方針とは、市長の市政運営の基本方針として、翌年度の主要事業や予算について方向性を示すものです。
令和6年2月13日開会の南陽市議会令和6年3月定例会において、白岩市長が令和6年度施政方針を述べました。(関連ファイルからPDF版をダウンロードできます。)
令和6年度施政方針
1 はじめに
令和6年度予算案をはじめとする重要な議案をご審議いただく南陽市議会3月定例会の開会にあたり、市政運営に臨む所信の一端と施策の大要を申し上げます。
はじめに、議員各位並びに市民の皆様におかれましては、日頃より市政全般にわたりご理解とご協力を賜り、深く感謝申し上げます。
元日に発生した「令和6年能登半島地震」によってお亡くなりになられた方々とそのご家族に、深い哀悼の意を表します。また、被災された皆様に、心からのお見舞いを申し上げますとともに、被災者の救済と被災地の復興支援のためご尽力されている方々に深い敬意を表します。
さて、昨年の世界情勢を振り返りますと、令和4年2月に勃発したロシアによるウクライナへの侵略が長期化し、ロシアによる非人道的な攻撃で1万人以上のウクライナ国民が犠牲になる中で、昨年10月7日、パレスチナ自治区ガザを実行支配するイスラム原理主義組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を仕掛けたことで双方に戦闘が発生しました。イスラエルの報復により、ガザでのパレスチナ人の死者数は2万人を超え、深刻な人道危機が深まっております。台湾有事など日本近隣も含めた世界各地で今後さらに紛争が広まる可能性が指摘されており、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値や国際秩序の存続が危機に瀕しております。
我が国においては、昨年5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類へ移行したことにより、約3年にわたって続いていた多方面への制約が解除され、市民生活や飲食、旅行をはじめとした経済活動の正常化が進んでおります。日経平均株価はバブル後の最高値を更新し、景気も上向きかけている一方で、一昨年から続く世界的なエネルギー・資材・食料価格等の高騰や円安の影響により、賃金上昇を上回るインフレが進行し、国民生活を取り巻く環境はより一層厳しさを増しております。このような中で政府は、「デフレ脱却のための総合経済対策」を取りまとめ、急激な物価高から国民生活を守るとともに、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済へ向けた取組を進めております。また、2022年の出生数が80万人を割り込み、少子化が政府の予測より8年早いペースで進む中で、2030年代に入ると若年人口が倍速で急減していくことが予想されることから、政府は昨年4月1日に子ども家庭庁を発足させ、その後、次元の異なる少子化対策の実現に向けて「こども未来戦略」を取りまとめました。児童手当の拡充や出産費用の保険適用、育児休業給付の給付率引き上げなどの具体的な施策を講じるとともに、経済成長による賃上げで若者世代の所得を増やし、出産・子育てしやすい環境を整えるとしております。
本市におきましては、市民生活に深刻な影響を与えている燃料、物価高騰対策として、市民税非課税世帯への給付を県内13市で最も早く実施するとともに、コロナ禍以降5度目となる全市民応援クーポン事業を実施するなど、即時即応体制で経済対策事業を実施いたしました。また、農家への光熱動力費や飼料高騰に対する支援、道路貨物運送業者や地域交通事業者への経営支援、保育所等への物価高騰及び給食費高騰に対する支援、高齢者及び障がい者施設への物価高騰の支援など、市独自にきめ細やかな支援を迅速に実施してまいりました。加えて、コロナ禍を契機としたニューノーマルの構築を図るため、「行かなくても済む市役所」を掲げ、昨年11月1日から住民票、印鑑登録証明書のコンビニエンスストアでの交付を開始するとともに、本年2月1日から「書かない窓口」を導入し、来庁者の負担軽減と手続き時間の短縮を図るなど、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による市民サービスの向上に取り組んでまいりました。
昨年は、イベントや旅行、飲食の機会が増え、ワインフェスティバルや盆踊り、夏祭りや花火大会など、市内外から多くの人が集まる催しが復活し、コロナ禍以前の賑わいが戻り始めております。また、インバウンド観光客の誘客を目的に、フラワー長井線に人気漫画「ラーメン大好き小泉さん」をラッピングした列車の運行を開始し、ラーメン及び市内周遊観光を柱としたモニターツアーが行われ、旅行商品も造成されるなど、新たに人を呼び込む試みも始まっており、今後の交流人口の増加と地域経済の活性化が期待される一年となりました。
瞬く間に広がるパンデミックや、昨日まで人々が平穏な日常を過ごしていた地域が突然戦場になるなど、今日の常識が明日の常識ではなくなるような激動の時代においても、地方自治体はこれまで以上にその責務である住民の福祉の増進を図り、100年先も持続可能な市政運営を行っていかなければなりません。大変困難なミッションでありますが、だからこそ大きな変革の契機と捉えることもできます。
ChatGPTをはじめとした生成AIが注目され、1年が経っております。革新的な技術は次々と生まれ、加速度的に普及は進むと考えられます。新たな時代を切り開くためには、未来のまちの姿を想像し、新しい技術や考え方を積極的に取り入れ、失敗を恐れず挑戦することが必要不可欠であると、強く認識しております。
本年も、市民生活を第一に、現在の課題を先送りせず真っ向から取り組みながら、次世代につなぐまちづくりを市民の皆様と協働で進めることにより、将来にわたって安心して暮らすことができる活力ある南陽市を実現してまいります。
2 市政運営の基本方針
令和6年度市政運営の基本方針を申し上げます。
国際情勢が一段と不安定化する中で、エネルギー価格や物価の高騰により、市民生活や事業者の経営環境が深刻な影響を受けております。令和6年度の市政運営にあたりましては、市民の暮らしを守ることを第一に、DXやゼロカーボン、SDGs、健康のまちづくりの推進など地域活力を創造し、持続的な市政の発展に繋がる施策をさらに推進してまいります。
また、第6次総合計画の7つの基本目標や第2期総合戦略の目標の達成に向けて、引き続き市政の柱に「子どもを産み育てやすいまち」・「年をとっても安心して暮らせるまち」・「人が集まり賑わうまち」を掲げ、最少の経費で最大の効果を発揮する施策展開により、「身の丈に合った対話のある市政」を基本として、市民が主役となり、何事にもチャレンジする気概に満ちた南陽市を牽引し、市民が幸せを実感できる豊かな社会を目指してまいります。
以上、まちづくりの方針を申し上げてまいりましたが、市政を運営するにあたっては、将来にわたって持続可能で公正であるかを判断基準とし、健全に財政運営を行うことが基盤となります。
今後の南陽市の50年、100年先の姿に責任を持つことを念頭に置き、市民ニーズの的確な把握に努めるとともに、新たな行政課題や行政需要にも臨機応変に対応するため、引き続き効率的・効果的な市政運営に取り組んでまいります。
3 令和6年度予算の編成方針と概況
令和6年度予算の概況について申し上げます。
国の地方財政対策では、社会保障関係費や人件費の増加が見込まれる中、住民のニーズに的確に応えつつ、こども・子育て政策の強化など、様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方交付税等の一般財源総額については、前年度を0.6兆円上回る62.7兆円が確保されました。
その内訳は、地方税が定額減税により前年度を0.1兆円下回る42.7兆円が計上され、地方交付税総額については前年度を0.3兆円上回る18.7兆円が確保された一方で、臨時財政対策債は前年度から半減の0.5兆円とするなど、継続して財源措置の質の改善と総額の確保が図られております。本市におきましても、国の施策と歩調を合わせながら、DXなどの新たな手法を取り入れることで市民サービスの向上を図りつつ、社会情勢の変化と新たな行政需要にも柔軟に対応していかなければなりません。
令和6年度予算編成におきましては、物価高に対応しながら、第6次総合計画の基本理念や、社会が求める「DX」「脱炭素化」「こども・子育て」「健康のまちづくり」などの取組を着実に推し進めるための予算を措置し、時勢に合わせた費目への重点配分を行いました。
一般会計では、当初予算額は166億8,000万円を計上し、前年を1.4%下回るものの過去2番目となる積極的な予算編成といたしました。また、特別会計では、前年比0.3%減の76億1,761万4千円を計上したところであります。
4 令和6年度の主要施策
令和6年度主要施策を総合計画の大綱に沿ってご説明申し上げます。
(1)新たな日常(ニューノーマル)を構築する
最初に横断的目標「新たな日常(ニューノーマル)を構築する」について申し上げます。
行政サービスのDXについて、新たに、パソコンやスマートフォンからインターネット経由で市税や上下水道料金の口座振替の申込ができるサービスを導入することで、市民の利便性向上を図ってまいります。また、自治体業務に生成AIを導入し、従来職員が行っていた業務を生成AIが担うことで、業務の生産性を上げ、業務時間を有効活用することで、市民サービスを充実させてまいります。
ゼロカーボンの推進について、新たに電気自動車を1台追加し、計2台を運用することで温室効果ガスの排出抑制を推進するとともに、災害・停電時の給電設備の増強を図ってまいります。また、公民館等の社会教育施設の照明器具をLED化することで、環境負荷の少ない地域づくりに向けて公共施設から率先して取り組んでまいります。
(2)健やかで安心な暮らし・子育てを実現する
次に基本目標「健やかで安心な暮らし・子育てを実現する」について申し上げます。
子育て支援について、昨年開設した赤湯第三学童を拡充し、増加する放課後の保育ニーズに対応するほか、引き続き、放課後子供教室を市内全小学校区で運営し、放課後における児童の安全な居場所づくりと、多様な体験を通した人材育成を地域全体で推進してまいります。3人っ子政策の保育料及び給食費の無償化・軽減対象者を拡大し、多子世帯をより一層支援してまいります。また、市内保育所及び小中学校等で実施する給食提供について、給食等食材料高騰対策支援事業を物価高騰に合わせて拡充し、食材料の高騰による給食費の保護者負担の増加の抑制と給食の質と量を保つ取組を強化してまいります。
健康まちづくりの推進について、新たに健幸ポイント事業を実施してまいります。市民の皆様に「楽しく」「お得に」「無理せず」運動の習慣化に取り組んでいただくことで、市民の健康づくりの推進はもとより、介護リスクの低減や将来の医療費・介護給付費の抑制、高齢者の外出や社会参画の促進に繋げてまいります。また、一般社団法人YAMAGATA ATHLETE LAB.(ヤマガタアスリートラボ)と連携したコンディショニング教室を引き続き実施し、市民の健やかな暮らしの実現に取り組んでまいります。
保健・医療について、HPVワクチンの女性への積極的勧奨を引き続き行うとともに、国に先駆けて令和5年6月から市独自に開始した男性への任意接種費用の助成を継続することで、がん等の疾病予防を図ってまいります。また、季節性インフルエンザの対応として、妊婦及び生後6か月から中学生までの任意接種費用の助成を継続してまいります。
障がい児・者の支援について、令和6年度を始期とする「障がい者計画及び第7期障がい福祉計画・第3期障がい児福祉計画」に基づき、障がい者施策全般と必要なサービスの確保を推進してまいります。また、障がいのある方の重度化及び高齢化や「親亡き後」を見据え、「地域生活支援拠点」等の拡充により、障がいのある方が住み慣れた地域で生活し続けられる仕組みを整備してまいります。また、令和6年度から新たに生活困窮者就労準備支援事業を実施し、複合的な要因により就労意欲が低下している生活困窮者に対し、就労意欲の向上及び就労に向けた計画的な支援を行ってまいります。
高齢者の支援について、「南陽市高齢者福祉計画・介護保険事業計画第9期」に基づき、介護保険サービスを持続的に提供するとともに、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムのさらなる充実を図ってまいります。
(3)地域に根ざした人材を育てる
次に基本目標「地域に根ざした人材を育てる」について申し上げます。
第六次教育振興計画実施の3年目となる令和6年度も、「地域総合型教育」を中核とする本市の教育を、つむぎ・つなぎ、進化・発展させ、あらゆる世代が誇りと生きがいを持ち、安心して暮らしていくことができる社会の実現に向け、高い志を持ち、生涯にわたって学び続け、自立的に生きる人を育んでまいります。
子どもたちを取り巻く環境の変化は加速度を増す中、地域の宝である子どもたちの豊かな情操と自立的な学習者としての資質・能力を高めていくため、さらに、これら児童生徒数の減少や学校施設設備の課題等の解決も含め子どもたちの望ましい教育環境を整えるべく、学校の適正規模・適正配置について検討を継続してまいります。また、社会教育、学校教育の領域を超え、人との関わりや、自然と触れ合うこと等、本物に触れる体験とともに、ICT機器の効果的な活用等を充実させてまいります。
小・中学校は、すべての子どもたちが安心して過ごせる魅力的な環境であることや、これまで以上に福祉的な役割や子どもたちの居場所としての機能を担うことが求められております。そこで、引き続きスクールソーシャルワーカーを配置するとともに、学習支援員を増員し、関係機関団体との連携を強化することで、その機能を充実させてまいります。
学校施設について、老朽化した施設の修繕工事を計画的に行うとともに、防犯カメラやインターホンカメラを更新する等の防犯対策工事を実施し、児童生徒が快適に安心して学べる教育環境を整備してまいります。また、給食関連設備の更新や修繕により、安全・安心でおいしい給食を安定的に提供してまいります。
庁内横断的なプロジェクトとして、南陽みらい議会事業に継続して取り組みます。有権者となる市内中高生の関心をさらに高めながら、課題解決に向け、みらい議員一人一人が多様なアイディアを出し合い、予算の活用について議論を重ね、具体的な実践につなげることで、将来を担う人材の育成を図ってまいります。
スポーツ交流について、南陽さわやかワインマラソン大会を、第25回を記念してハーフマラソン部門も含めて開催するとともに、向山公園野球場照明設備の更新や、管理棟の補修工事など環境整備を進めることで、スポーツを通じた交流の促進を図ってまいります。
生涯学習の充実について、整備を進めている宮内公民館(宮内地区交流センター)においては、地域づくりや人づくり、住民相互の交流の輪が広がる社会教育活動を企画・支援し、地域力を育み高めていくとともに、エネルギー効率に優れ、車いすの方も安全で利用しやすいユニバーサルデザインに配慮するなど、人と環境にやさしい施設を目指してまいります。また、魅力ある高校教育への支援事業として、令和6年度から地域創生コースが設置される山形県立南陽高校と地域、市役所が連携した総合的な探究学習を進めるとともに、発足5年目となる南陽高校市役所部の活動を支援し、他地域の高校生との交流事業などを通じて地域に定着する人材の育成に継続して取り組んでまいります。また、開館30周年を迎える結城豊太郎記念館について、クラウドファンディングを活用し、薩摩藩島津家ゆかりの臨雲文庫表門を後世に伝えるための修復等を計画するとともに、遺徳を顕彰するためのパンフレットを作るなど、あらためて先生の人柄や業績を周知し、教育、学術及び地域文化の振興と発展を図ってまいります。
(4)力強い産業の基盤をつくる
次に基本目標「力強い産業の基盤をつくる」について申し上げます。
産業の付加価値を高めるため、企業立地奨励金により市外からの企業の誘致や市内企業の新たな工場等への投資を促進し、雇用の場の確保を図ってまいります。新たな産業団地造成については、計画づくりを進めるとともに、産業の集積を図れるよう、需要に応じた開発を行ってまいります。また、市内経済の活性化を図るため、新規創業についても引き続き支援してまいります。
農産物を原料とした商品開発や全国的な見本市への出展等に取り組む意欲ある事業者を支援することにより、6次化も含め、農業を中心とした産業の振興を図ってまいります。
農業振興について、令和6年に改正予定の「食料・農業・農村基本法」の基本理念に基づき展開される各施策により、持続可能な農業の展開と農業者の経営安定及び継続対策を実効的に進めてまいります。また、獣害対策として電気柵設置の補助や猟友会と連携・協力した有害鳥獣の捕獲に継続して取り組んでまいります。
「人・農地プラン」が「地域計画」として法定化したことから、地域の幅広い関係者で話し合いを行い、農地を誰がどう使っていくか農地の未来を描く「地域計画」を令和7年3月まで策定できるよう、準備を進めてまいります。
(5)強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる
次に基本目標「強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる」について申し上げます。
災害に強いまちをつくるについて、南陽市自主防災組織連絡協議会を通じ、各地区自主防災組織の活動と組織間の連携による地域防災力の一層の充実強化に努め、「自らの命は自ら守る」ための自助の意識啓発と、共助の精神の醸成に努めてまいります。最上川流域の浸水被害の軽減を図るため、国や県、関係機関と連携し「最上川水系( 置賜地域 )流域治水プロジェクト」を推進してまいります 。大きな水害を経験した全国の市区町村長の意見交換等の場である「水害サミット」の代表世話人に今年1月に就任したことを踏まえ、全国の自治体と効果的な水害対策を共有するとともに、地域間の連携を深めてまいります。今年度、公民館等の指定避難所に無線通信ネットワーク(Wi-Fi環境)の整備を進めておりますので、来館者の日常での利用はもとより、災害時には被害情報の共有や情報発信等に活用してまいります。
農業用ため池の決壊等を防ぐため、防災重点ため池を対象に農業用の利用に供しておらず、管理者との協議が整ったため池について、計画的に廃止事業を展開して、地域防災上のリスクの軽減を図ってまいります。他にも、浸水対策として、一級河川前川の溢水による浸水被害の軽減に向けて、堰の整備及び不要施設の撤去等を推進してまいります。
公共交通について、令和6年度から令和15年度にかけて、山形県及び沿線2市2町にて国の鉄道事業再構築事業を活用した山形鉄道フラワー長井線の鉄道施設の整備・更新を支援し、鉄道の安定的・継続的な運行を図ってまいります。市内循環バス3路線の維持と安全運行に努めるとともに、沖郷地区の地域公共交通「おきタク」が持続可能な公共交通となるよう運行協議会への支援を拡充してまいります。
交通インフラの整備について、市道蒲生田関口線の開通や市道川尻線等の冠水対策、市道上野新田線の通年通行を目指した改築工事などを令和6年度に完了することで、市民の利便性向上を図ってまいります。市道六角町富貴田線は令和8年度の供用開始を目指して事業を実施しており、令和6年度は用地取得・物件補償を進めてまいります。国道13号の改修や一般県道赤湯停車場線、主要地方道山形南陽線板宮工区等の整備促進に向けて、引き続き国や県に強く要望してまいります。東北中央自動車道の整備効果を一層高めるため、本市へのスマートインターチェンジの早期設置実現に向けた調査・検討を進め、諸問題の解決や関係機関への要望を行ってまいります。
快適な居住環境をつくるについて、花見町古堤の水辺空間については、地元住民・関係機関と調整を図りながら、住民の憩いの場となるよう整備してまいります。空き家対策として空き家の後片付け費用に対する補助により空き家バンクへの登録を促進するとともに、老朽危険空き家除却支援事業を継続し、さらに、所有者または相続人による対応が見込めない危険度の高い空き家に対しては行政代執行も視野に入れ、安心して暮らすことのできる住環境の確保に努めてまいります。雪対策については除雪予算を増額し、「きめ細やかな除雪」や「やさしい除雪」に引き続き取り組むとともに、効果的に除排雪を行うことで冬季間の通行の安全を確保してまいります。また、地域の人と動物が共生できる環境を目指して、飼い主のいない猫や適正に飼養されていない猫の不妊及び去勢手術費用等の助成について、引き続き支援を実施してまいります。
水道事業について、SDGsの観点を踏まえて料金負担の公平性が高まるよう、料金体系の見直しを進め、持続可能な運営に努めてまいります。また、管路の耐震化更新を計画的に推進し、水道水の安定供給に努めてまいります。下水道事業について、下水道未整備地区への管渠整備と既設老朽管渠の改築更新を進めるとともに、大橋地区農業集落排水施設について令和6年4月から公共下水道に統合し、施設の合理化と業務効率の向上を図ります。
防犯・交通安全について、通学路や生活道路の防犯対策と交通事故防止を図るため、LED防犯灯への補助を継続してまいります。消費生活の安定と向上を図るため、多種多様化する消費者トラブル等解決のための相談体制を維持し、県消費生活センターや専門家による相談業務と連携した取組を継続してまいります。
(6)自然の豊かさを守る
次に基本目標「自然の豊かさを守る」について申し上げます。
2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロにするゼロカーボン目標の実現に向けて、南陽市地球温暖化対策実行計画に基づき市民・事業者・市(行政)が一体となった取組みが必要となるため、令和6年度より南陽市ゼロカーボン推進協議会を設置し、三者が連携しながら地球温暖化対策の推進を図ってまいります。
資源リサイクルについて、資源ごみの売却収入を財源とする「元気がでるまちづくり交付金事業」による地域コミュニティの環境意識の向上をはじめ、資源リサイクルの推進やごみの減量化のため、ごみ分別の周知徹底と廃小型家電回収事業、使用済みインクカートリッジ及び電源や通信用ケーブルの回収を推進してまいります。
白竜湖について、引き続きヒシの繁茂状況に応じた段階的な除去などの水質改善に向けた取組を進めるとともに、植生や湧水の調査等を実施することで、自然や景観の保全に努めてまいります。
令和6年度から森林環境税の課税が開始されることから、これまで森林環境譲与税を活用し実施してきた森林資源の調査解析によって森林経営管理制度を推進するとともに、森林整備の必要性や実施状況等について市民へのPRを図ってまいります。
(7)人がつながりまちを育てる
次に基本目標「人がつながりまちを育てる」について申し上げます。一昨年オープンした「赤湯温泉 湯こっと」は、多くの利用者から好評をいただいており、赤湯温泉の魅力を発信するだけでなく、バリアフリー観光を推進し、障がいのある方や介護が必要な方も楽しめる健康増進と交流の場となるよう運営してまいります。
引き続き株式会社四季南陽様と協議を進め、「南陽を世界ブランド」にする構想の実現を図ってまいります。
ラーメン課プロジェクトは、人気漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボしたラーメンカードラリー等を引き続き実施し、全国に南陽市をPRするとともに、ラーメンを主役にした地域活性化を進めてまいります。
本市の玄関口である赤湯駅の南陽市総合観光物産センターを改修し、観光客が滞在しやすく、市民も利用しやすい環境を整備することで、赤湯駅を中心とした賑わいづくりを進めてまいります。
持続可能な行政サービスのための財政運営について、「南陽市健全な財政運営に関する条例」に基づく中期財政計画により、中長期的展望に立った財政運営を行うことで、市民生活に必要不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう努めてまいります。また、地域活性化に寄与するふるさと納税のより一層の推進を図り、財源を確保するとともに、企業版ふるさと納税を積極的に活用し、企業や民間団体との官民連携の取組を進めてまいります。
(8)発信力のあるまちづくりを進める
次に基本目標「発信力のあるまちづくりを進める」について申し上げます。
グローバル化について、令和6年度は本格的なコロナ禍明けの観光需要回復が見込まれ、交流人口の拡大が期待されます。そのため地域資源のさらなる磨き上げを行うとともに、海外へのプロモーションについても、台湾を中心に地域連携DMOなどとの広域連携を図り、継続的に実施してまいります。
情報発信について、市民の皆様が必要とする情報を、ホームページやSNS等で広く効果的に発信するとともに、関係人口拡大に向け、民間事業者が提供する情報配信サービスを利用し、市内外に戦略的な広報を展開してまいります。また、地域おこし協力隊事業を継続し、情報発信と地域産業の活性化を図るとともに、6次産業化に意欲のある事業者が全国的な見本市等へ出店する際の支援を行うことで、本市の優れた農産品や農産加工品のPRを図ってまいります。
観光資源について、烏帽子山公園周辺整備計画に基づき、見晴らし台修景整備事業に着手し、桜の名所としての魅力をさらに向上させ、多くの皆様に烏帽子山公園の桜を楽しんでいただけるよう整備してまいります。また、熊野大社や南陽スカイパークなど観光需要の高い観光スポットと、ワインや日本酒、ラーメン、フルーツなどの食をテーマとした観光コンテンツを結び付け、さらなる魅力向上を目指してまいります。既存の資源と開湯930余年を数える赤湯温泉との連携を図り、体験、宿泊を組み込んだ着地型コンテンツの作り込み等を行ってまいります。
5 結び
現在の一万円紙幣には、昭和59年の改札以来約40年間、福沢諭吉が描かれておりますが、本年7月3日より、新たに渋沢栄一が描かれる予定となっております。
渋沢栄一は江戸時代末の1840年に生まれ、官僚、実業家、教育者、慈善家、そして政治家として日本の近代化に多大な貢献をした人物です。現在も日本経済を支える多種多様な会社や経済団体を設立し、同時に実業教育や女子教育、福祉・医療事業を進めるなど、江戸末期から昭和初期の近代日本において、多面的かつ重要な役割を果たしました。
渋沢栄一訓言集には「できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与えるように行動するのが、吾人の義務である」と語ったと記録されており、数多くの功績を残した渋沢栄一の行動規範の一つでもあります。それはまさしく、私たち地方自治体が行政として果たす役割と地方自治法の第一条に規定されている、住民福祉の増進を担うに際し、根本とすべき理念そのものであります。
冒頭、今日の常識が明日の常識ではなくなるような激動の時代だと申しました。すなわち、昨日の条例や規則が今日は適さなくなる、前例踏襲が通用しない時代だとも言えます。そのような時代にあって、地方自治体が、できるだけ多くの人に、できるだけ多くの幸福を与える環境を整えるために、市の条例や規則が、その妨げになっていると客観的に認められる場合には、自らが定めた条例や規則を、適切に改めることを躊躇しない覚悟が必要です。
その覚悟と責務を胸に、私は令和6年度もまちづくりの主役である市民の皆様とともに、全身全霊で市政を運営してまいります。市民の皆様ならびに議員各位におかれましては、より一層のお力添えを賜りますよう、心からお願い申し上げます。
(更新日:令和6年2月13日)