令和3年 年頭の訓示

令和3年 年頭の訓示

 明けましておめでとうございます。昨年中は、新型コロナウイルス感染症から市民の命と健康、経済や生活を守る闘いに精力的に挑んで下さった同僚の皆さんに、心から感謝を申し上げます。感染状況は世界的にも国内でも厳しさを増していますが、人類が新型コロナを克服した年に新年がなってほしいと願っています。

 2日、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の知事は、政府に対して緊急事態宣言の発令を要請しました。大晦日に東京都で1337人、全国で4520人と、感染の増加傾向が続いています。
 そもそも冬はウイルス性の感染症が流行しやすい時期です。気温と湿度が低いと、ウイルスが感染力を持つ時間はより長くなり、ヒトの免疫力は低下するからです。闘いは、いまが正念場です。
 早ければ2月下旬、新型コロナのワクチン接種がはじめられるように、準備が進められています。まずは医療従事者から、続いて3月下旬を目途に65歳以上の高齢者、4月以降に基礎疾患がある方、高齢者施設で働く方、そしてその後に一般の方へと接種が行われていく予定です。自治体が行うこのワクチン接種は、市町村にとっては令和2年の特別定額給付金支給事務に続く、大規模なオペレーションとなります。ワクチン接種を望む住民に対し、正しい情報を提示し、しっかり供給できるようにすることが令和3年における基礎自治体の大きな責務です。
 アメリカではワクチン接種が進めば、2021年初秋までにかなり正常に近い状態に戻れるだろうとの見通しを、アメリカの国立アレルギー感染症研究所長が示した、とCNNでは報じています。元日に累計感染者数が2千万人、総人口の6%を超えたアメリカにしては随分と楽観的です。一方、累計感染者数が人口の約0.2%である日本(ちなみに東京都においては0.4%、山形県では0.04%)においては、この冬をなんとか乗り切って、ワクチン接種が順調に進めば、収束の可能性が見えてくるのではないかと期待しています。
 しかしながら、ウイルスの撲滅による終息は不可能であり、当面は新型コロナとの闘いは続きます。すでに発生している感染力の強い変異株の流行やワクチン耐性株発生の懸念もある上に、別の新興感染症が発生することも十分にありえます。
 危機管理において、私たちが留意すべきことは、いつでも同じです。最悪の事態を想定し、被害を最小限にとどめられるよう、最大限の努力をすることです。

 新型コロナウイルスはこれまでの社会の在り方について、コペルニクス的な転換を迫っています。
 ついこの間まで如何ともし難かった、東京一極集中が、コロナによって、ついに逆転の兆しが出てきました。
 ついこの間まで如何ともし難かった、マイナンバー制度の普及が、免許証との一体化を令和6年度末までに前倒しすることにより、一気に進もうとしています。
 ついこの間まで数年かかっても実現が危ぶまれていた、学校での1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するGIGAスクール構想が、今年度中に全国ほぼ全てで実現します。
 5年後までに、住民情報や税、社会保障などの主要な17の業務のシステムについて、国と地方自治体の情報システムが統一される方針を政府は打ち出しています。  敷居が高い市役所にわざわざ足を運ばなくても買い物と一緒にできる期日前投票を他市に先駆けて導入してきましたが、市役所のサービス自体のオンライン化が進みます。
 テレワークやオンライン会議は珍しいものではなくなりました。
 ほとんどの文書で押印が廃止され、行政のデジタル化、ICT、AI、RPAの活用が進み、人間が行う業務は抜本的に変わっていきます。
 自治体の運営にも大きな影響を及ぼします。令和3年度の予算編成では、数億円規模で市税の減少を見込まなくてはなりません。令和4年度もその傾向は続くでしょう。
 厚労省が発表した全国の令和2年1~10月の妊娠届件数は、前年同期比5.1%減の72万件で、令和3年の出生数は大きく減ることが懸念されています。本市も同様の傾向にあります。

 このような大変革期に皆さんの念頭においてほしいことが二つあります。一つは「変わらずに守るべきを守る」ということです。多くの物事が変わっても、変わらずに守り続けていくべきこともあります。それは「市民福祉の向上のために働く」という私たちの原点や、人との絆、ご縁、思いを大切にすることなどです。
 そしてもう一つは「ピンチはチャンス」という言葉です。こういう非常時だからこそ、これまで成し得なかったことを成し遂げるチャンスであり、市民のための市役所として、長年使ってきて所々に時代に合わないところも出ている市役所のOSを書き換えるチャンスです。この機会に、将来も持続可能な、そしてより便利で市民に寄り添った市役所を、いま共に同僚として働く皆さんと作り上げていきたいと願っています。
 職員の皆さんは、当たり前のことですが外部の評論家ではなく実務者です。市役所職員一人一人が、自分の部署のことだけを考えるにとどまらず、「自分が市長だったら」と全体最適を考える経営者としての視点を持って、その職責を全うしていただくことを強くお願いします。私も市民から選挙によって権限を負託され、市を代表し、統括し、監督する責務を負う市長として、全責任を持って、同僚である皆さんと一緒に全力を尽くしてまいります。
 新しい年が、皆さんにとって、そして南陽市にとって、コロナ禍から復活の狼煙を上げる希望に満ちた幸い多い1年であることを心から願い、年頭の訓示といたします。

令和3年1月4日 南陽市長 白岩孝夫