令和5年度 新採職員辞令交付式及び年度初め訓示

 おはようございます。まず、新たに仲間となった新規採用の同僚職員の皆さんにお話しします。皆さんの南陽市役所への入庁を心から歓迎します。皆さんに3つだけお願いします。
 1つ目、与えられた場所で全力を尽くして下さい。
 2つ目、素直に先輩職員に学び、市民の声に耳を傾けて下さい。
 3つ目、アンテナを高く上げ、地域に飛び出して下さい。
 公務員であっても民間事業者であっても同じですが、働く部署は辞令という職務上の命令によって定められます。皆さんが配属された部署は、もっと言えばその部署の向こう側にいる市民一人ひとりは、皆さんを必要としています。その部署への配属は、自分がなすべきことがあるからだと前向きに捉えて下さい。その姿勢が、私たちが市の職員として働く目的である、市民福祉の向上と市政発展に必ず繋がります。私たちは今日から仲間です。自分のためではなく、人のために力を合わせて働く仲間です。共にがんばっていきましょう。
 ところで、南陽市在住のオリンピアン池田めぐみさんが設立した「ヤマガタアスリートラボ」と南陽市は、「健康まちづくりに関する連携協定」を2月に締結しました。その取組の第1弾が、3月に行われた身体の調子を整える「コンディショニングセミナー」です。例えば、頭痛、肩こり、腰痛、膝関節痛などの原因は、実はそれぞれの部位ではなく、猫背などの姿勢だったりします。日常でできる簡単な体操で身体の不調を予防できれば、心にも良い影響が考えられ、市民生活の質の改善に繋がります。そういった取組を始めていきますので、ぜひご参加や周知についてよろしくお願いします。
 さて、皆さんに申し上げます。野球の世界一を決める第5回WBCが先月開催され、日本は3大会ぶり3回目の優勝、世界一を奪還しました。とくにMVPを獲得した大谷翔平選手が大きな注目を集めましたが、当初4番を任された村上宗隆選手の不振、日本の若き主砲が打率1割を切り苦しむ姿にも多くの心配が寄せられました。
 村上選手は、改めて言うまでもなく昨シーズン史上最年少で三冠王を達成した偉大な打者です。三冠王は2004年以来18年ぶりのことで、日本のプロ野球史上8人しかいない、めったに出ない物凄い記録です。村上選手はその他にも日本人過去最多のシーズン56本塁打、史上初の5打席連続本塁打などを記録した、現在の日本プロ野球界の第一人者です。
 従って最も強打者が選ばれるべき4番に座るのは当然な訳ですが、村上選手は第1ラウンドからずっと本来の力を発揮できず、深刻な不振に喘いでいました。その姿は、村上選手が昨シーズン、ホームラン55本打って、王貞治さんが持つ日本人登録選手によるシーズン最多タイ記録に58年ぶりに並んだあと、13試合ホームランが出ず、不振に陥った状況と酷似していました。WBCで打席に立つ村上選手の表情は、重圧という言葉を人間の顔にしたらこんな表情になるんだろうなという顔をしていました。責任感が強くて真面目そのものの顔です。期待に応えなきゃいけないと思えば思うほど、肩に力が入って、本来の力が出せなくなっているのが、素人目にもわかりました。
 ひるがえってみれば、私たちも同じです。職務に取り組むうえで真面目な姿勢はもちろん必要ですが、過去の経験や前例が通用しない変化の激しい時代にあっては、柔軟な考え方や対応が求められます。そのときに力み過ぎてしまうと、脳や筋肉がこわばり、新たな発想や行動ができなくなります。
 新型コロナや戦争はもちろん、ヒト・モノ・エネルギー不足、物価高騰、人口減少、DX、AIの進化、フレイルなど、まちづくり全般にわたってかつてない課題が発生し、状況への対処と適応が求められています。そうした時代だからこそ、真面目な姿勢を根本に堅持しつつ、思考を硬直化させず、広い視野を持ち、一人ひとりが十分に力を発揮してほしいと思います。
 そのために必要なことは、ただ一つです。自分のためではなく、市民のために働くという理念です。
 村上選手はWBCでその後、準決勝で逆転サヨナラ安打、決勝で同点に追いつくホームランを放つなど、自縄自縛を解き放ち、本来の力を発揮することができました。日本のプロ野球開幕戦でもいきなり2ランホームランです。精神状態がいかに行動に影響するか、如実に表れています。
 私たちも村上選手のように、心と体を柔らかくし、ただひたすらにチーム南陽市のために、市民のために、仲間同士で支え合い、補い合いながら、自らの役割、公務員としての使命を果たしていきましょう。私もどんなに困難でも、自らの職責を果たしてまいりますので、令和5年度も同僚職員の皆様のご協力を衷心よりお願い申し上げ、年度初めの訓示といたします。

令和5年4月3日 南陽市長 白岩孝夫