令和5年度施政方針

  施政方針とは、市長の市政運営の基本方針として、翌年度の主要事業や予算について方向性を示すものです。 
  令和5年3月2日開会の南陽市議会令和5年3月定例会において、白岩市長が令和5年度施政方針を述べました。(関連ファイルからPDF版をダウンロードできます。)

令和5年度施政方針

1 はじめに

 令和5年度予算案をはじめとする重要な議案をご審議いただく南陽市議会3月定例会の開会にあたり、市政運営に臨む所信の一端と施策の大要を申し上げます。  
 はじめに、昨年の市長選挙において、引き続き3期目の市政の舵取りを担わせていただくこととなりました。改めて責任の重さを自覚するとともに、公正で持続可能な市政の実現と市民福祉の向上を目指してまいりますので、議員各位並びに市民の皆様におかれましては、今後ともご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 さて、昨年2月にロシアによるウクライナ侵略が勃発し、1年が経過しました。武力による他国の主権侵害、無差別爆撃による多数の民間人殺害、これらは明確な国際法違反、戦争犯罪であり、断じて容認できません。一刻も早い停戦と、子どもや女性、お年寄りなどを含めたウクライナの全ての無辜(むこ)の人々に、平穏な日常が戻ることを願っています。
 昨年を振り返りますと、世界では多くの諸外国で新型コロナウイルス感染症に係る医療ひっ迫や死者数の増加などに苦慮しつつも、マスク着用や行動規制の緩和が進み、パンデミックからの脱却が図られています。一方、コロナ禍からの反動需要やウクライナ情勢の影響による世界的なエネルギー、食料、材料、人手などの不足やサプライチェーンの混乱から、諸物価が暴騰し、インフレ抑制のため欧米各国の金融引き締めが加速したことで、世界経済は景気後退懸念が強まっています。
 我が国においても、年初からのコロナ第6波では「まん延防止等重点措置」が適用されたものの、その後の第7波、8波では行動制限は行われず、コロナ禍からの社会経済活動の緩やかな持ち直しが続く一方で、世界的なエネルギー・食料価格等の高騰やインフレの影響で、国民生活を取り巻く環境は厳しさを増しております。このような中で政府は、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」や「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を実施し、原油価格や物価高騰へ対応するとともに、構造的な賃上げや成長のための投資と改革を進めるとしております。また、デジタル技術を活用した地方創生の加速化・深化のため「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を閣議決定し、地方における社会課題の解決、デジタル実装の基礎条件整備を目指すとしています。
 本市におきましては、市民生活に深刻な影響を与えている燃料、物価高騰対策として、全市民応援クーポン事業を3度にわたって実施するなど、独自の緊急経済対策事業を逐次実施するとともに、低所得世帯への灯油購入助成、農家への光熱動力費や飼料高騰の支援、保育所・学校給食への支援など、時々の状況に応じた必要な対策を細やかに実施してまいりました。加えて、コロナ禍を契機としたニューノーマルの構築に向けて、市民の利便性向上のため「行かなくてもすむ市役所」を目指し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組んでまいりました。
 昨年は、日本さくら名所百選の地である烏帽子山千本桜の桜まつりに、久しぶりに市内外から多くの花見客が訪れていただいたことを皮切りに、地域のお祭りや二十歳のつどい、さわやかワインマラソン大会など、3年ぶりに実施された催しも数多く、市民の皆様の笑顔が少しずつ戻ってきた1年でした。本年は、変異株などの状況を注視しつつも、昨年以上に笑顔の日常を取り戻し、コロナ後の世界へと本格的に踏み出す年です。
 21世紀に入って来年には四半世紀になろうとする現在、幼い赤ちゃんや、か弱い一般の人々が住む市街地にミサイルが撃ち込まれ、命を落としていく惨状を目の当たりにすることがあろうとは、よもや思いもよらず、今もって憤りと痛苦の念を禁じ得ません。無残に毀(こぼ)たれた道路や橋には、侵略以前には笑顔で行き交う人々の姿があり、それを作り守ってきた行政職員の想いがあったはずです。それを考えれば、平和こそがまちづくりの、人々の幸せの、全ての礎であることを改めて強く認識します。
 私たちに突き付けられた世界の現実は、かつてない混沌の度合いを深めておりますが、平和を希求する日本国民として、国民に保障された自由と権利を保持するための不断の努力を積み重ねるとともに、1741を数える基礎自治体の一つとして、現在及び将来の市民がその福利を享受できるよう、国や県と連携しながら、自らの責務を果たしていかなくてはなりません。
 その先にこそ私たちの未来、「つながり つどう 縁結ぶまち 南陽」という将来都市像があり、市民生活を第一に考えながら、現在の課題を先送りせず真っ向から挑戦し、将来にわたって安心して暮らすことができる活力ある南陽市を実現してまいります。

2 市政運営の基本方針

 令和5年度市政運営の基本方針を申し上げます。
 長引くコロナ禍は、市民の経済活動のみならず、外出を控え、社会参加が少なくなることで、特に高齢者の筋力低下などのフレイル(虚弱)問題にも大きな影響を及ぼしています。物価高騰による市民生活への影響を注視するとともに、ポストコロナを見据えた感染防止対策と社会経済活動の両立と、市民の健やかな暮らしを守るため、介護予防、フレイル対策も強化する必要があります。
 少子高齢化、人口減少社会の克服は、昨年新たに政府が策定した「デジタル田園都市国家構想総合戦略」に基づき、これまでの地方創生の取組をさらに進めてまいります。
 取組から3年目を迎える第6次総合計画の7つの基本目標及び第2期総合戦略の目標の達成に向けて、これまでの事業を年度毎に検証しながら、最小の経費で最大の効果を発揮する施策展開を進めてまいります。また、引き続き市政の柱に「子どもを産み育てやすいまち」・「年をとっても安心して暮らせるまち」・「人が集まり賑わうまち」を掲げるとともに、「身の丈にあった対話のある市政」を基本として、市民が主役となり、何事にもチャレンジする気概に満ちた南陽市をけん引し、市民が幸せを実感できる豊かな社会を目指してまいります。以上、まちづくりの方針を申し上げてまいりましたが、市政を運営するにあたっては、将来にわたって持続可能で公正であるかを判断基準とし、健全に財政運営を行うことが基盤となります。
 依然として財政状況は厳しい環境にありますが、今後の数十年、百年先の姿に責任を持つことを念頭におき、市民の皆様の声に耳を傾け、新たな行政課題や行政需要にも臨機応変に対応し、効果的かつ効率的に市政を運営してまいります。

3 令和5年度予算の編成方針と概況

 令和5年度予算の概況について申し上げます。
 国の地方財政対策では、社会保障関連経費の増加が見込まれる中、住民のニーズに的確に応えつつ、地域のデジタル化や脱炭素化の推進など、様々な行政課題に対応し、行政サービスを安定的に提供できるよう、地方交付税等の一般財源総額については、前年度を1.2兆円上回る65.1兆円が確保されました。
 その内訳は、地方税が前年度を1.6兆円上回る42.9兆円が計上され、地方交付税総額についても前年度を0.3兆円上回る18.4兆円が確保された一方で、臨時財政対策債は前年度から0.8兆円減の1.0兆円とするなど、前年に引き続き財源措置の質の改善が図られております。本市におきましても、国の施策と歩調を合わせながら、社会情勢の変化と新たな行政需要にも柔軟に対応していかなければなりません。
 令和5年度予算編成におきましては、将来にわたって持続可能な行政運営を基本として、市民の暮らしと安心を守り、生活に直結する事業を第一に据えるとともに、DXやゼロカーボン、SDGsの推進など、ポストコロナ時代において地域活力を創造し、持続的な社会の発展につながる事業に対して、重点的に予算措置を行いました。
 一般会計では、宮内公民館や市道六角町富貴田線などの建設事業や、DX、ゼロカーボンの取組を積極的に進める事業等を計上したことにより、当初予算額は前年比6.2%増の169億2,200万円を計上し、過去最大となる積極的な予算編成といたしました。また、特別会計では、前年比0.6%増の76億4,238万6千円を計上したところであります。

4 令和5年度の主要施策

 令和5年度主要施策を総合計画の大綱に沿ってご説明申し上げます。
(1)新たな日常(ニューノーマル)を構築する
 最初に横断的目標「新たな日常(ニューノーマル)を構築する」について申し上げます。
 ポストコロナの新しい未来を切り開くため、デジタル田園都市国家構想の実現を目指し、DXやゼロカーボンを推進してまいります。
 行政サービスのDXについて、マイナンバーカードを利用し、自宅にいてもスマートフォン等で利用可能なスマート申請の範囲を拡充するとともに、住民票の写し等の証明書を全国のコンビニエンスストアで取得できるコンビニ交付を導入してまいります。さらに、市役所に行く前に窓口での各種手続きをインターネットで予約できる「事前申請システム」や市役所窓口での申請を電子化し、書類を書かなくても済む「書かない窓口システム」を導入することにより、書かない・待たない・行かなくても済む市役所を進めてまいります。併せて、庁内のペーパーレス化と電子決裁の導入により、事務効率の向上を図ってまいります。また、公民館等の指定避難所には、誰もが利用できる無線通信ネットワーク(Wi-Fi環境)を整備し、市有施設のデジタル通信環境を整えてまいります。
 ゼロカーボンの推進について、市庁舎に再生可能エネルギー設備を導入し、温室効果ガスの排出抑制を推進するとともに、災害・停電時の防災拠点施設としての機能維持を図ってまいります。また、公民館等の社会教育施設や斎場しらぎくの照明器具をLED化するとともに、住宅用太陽光発電システム設置補助金を拡充し、環境負荷の少ない地域づくりに向けて公共施設から率先して取り組んでまいります。
 オンライン等を活用した各種移住相談会への参加や市のPR活動を推進し、UIJターン者の増加を目指してまいります。また、県外に住む学生へSNSを活用した情報発信や食を通じた交流を継続することで、故郷との関係を強固にし、将来的な帰郷や関係人口の増加につなげてまいります。
(2)健やかで安心な暮らし・子育てを実現する
 次に基本目標「健やかで安心な暮らし・子育てを実現する」について申し上げます。
 子育て支援について、出産・子育て応援交付金の支給により、出産前後の相談支援と合わせて経済的支援を図ってまいります。市内保育所及び小中学校等で実施する給食提供について、給食等食材料高騰対策支援事業により、食材料の高騰による給食費の保護者負担の増加を抑制するとともに、子どもへ提供する給食の質と量を保つ取組を強化するほか、3人っ子政策の対象者を拡大し、多子世帯をより一層支援してまいります。引き続き、放課後子供教室を市内全小学校区で運営し、放課後における児童の安全な居場所づくりと、多様な体験を通した人材育成を地域全体で推進してまいります。また、子どもと家族が抱える多様な課題に対応するため、学齢期以降の子どもに対し居場所の提供を通じて生活習慣の形成や学習のサポート、食事の提供など総合的な支援を行ってまいります。
 健康づくりの促進について、多くの市民が気軽に楽しく参加できるイベントとして南陽ランアンドウオークを開催し、「走る・歩く」をきっかけに、市民一人1スポーツ意識を高め、健康体力づくりを進めてまいります。
 保健・医療について、引き続きHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の積極的勧奨を通して、希望する方への予防接種を推進するとともに、妊婦及び生後6か月から中学生までの季節性インフルエンザ任意接種の費用を市独自で助成してまいります。また、コロナ禍により市民の運動機会の減少やフレイル問題が加速していることから、一般社団法人YAMAGATA ATHLETE LAB.(ヤマガタアスリートラボ)と連携し、市出身のオリンピアン等による市民の健やかな暮らしと学校部活動の支援に取り組んでまいります。
 障がい児・者の支援について、令和5年度で「障がい者計画及び第6期障がい福祉計画・第2期障がい児福祉計画」の計画期間が満了することから、各計画を見直し一体的に策定することで、令和6年度以降の障がい者施策全般と必要なサービスを確保してまいります。また、障がいのある方の重度化及び高齢化や、「親亡き後」を見据え、障がいのある方が住み慣れた地域で生活し続けられる仕組みとして、地域生活支援拠点の整備を進めます。令和5年度から新たに若者の自立のための居場所づくり事業を実施し、ひきこもり等の状態にある方が自宅以外でも安心して過ごすことができるよう『居場所』を開設することで、ご本人が望む社会生活につなぐ支援の糸口とし、社会的自立を支えてまいります。
 高齢者の支援について、「第9期高齢者福祉計画・介護保険事業計画」を策定し、介護保険サービスを持続的に提供するとともに、住まい、医療、介護、予防、生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムのさらなる充実を図ってまいります。
(3)地域に根ざした人材を育てる
 次に基本目標「地域に根ざした人材を育てる」について申し上げます。
 第六次教育振興計画実施の2年目となる令和5年度も、「地域総合型教育」を中核とする本市の教育を、つむぎ・つなぎ、進化・発展させてまいります。その中で、あらゆる世代が誇りと生きがいを持ち、安心して暮らしていくことができる社会の実現に向け、高い志を持ち、生涯にわたって学び続け、自立的に生きる人を育んでまいります。
 地域の宝である子どもたちの豊かな情操と自立的な学習者としての資質・能力を高めていくために、人との関わりや、自然と触れ合うこと等、本物に触れる体験とともに、ICT機器の効果的な活用等を充実させてまいります。特に、学校は、すべての子どもたちが安心して過ごせる魅力的な環境であることや、これまで以上に福祉的な役割や子どもたちの居場所としての機能を担うことも求められております。GIGAスクールタブレットパソコン等を活用した子どもたち一人一人の「個別最適な学び」「協働的な学び」の充実や学習支援員、スクールソーシャルワーカーの増員、関係機関・団体との連携強化による支援体制を構築してまいります。
 地域総合型教育と中高生による市民参画への新たな視点として、これまで取り組んできた生徒議会事業をさらに発展、進化させ、まちづくりの実践へとつなげてまいります。質の高い学びを目指したより良い教育環境を目指して、教育委員会にて学校関係者や有識者による(仮称)教育振興検討委員会を設置し、学校の適正規模・適正配置について検討してまいります。また、中学校部活動を地域へ移行するため、地域移行準備委員会を設置しておりますので、円滑な移行に向けての準備を進めてまいります。
 スポーツ交流について、南陽さわやかワインマラソン大会の開催とともに、中央花公園の園路や向山公園野球場スタンドの補修工事など、環境整備を進めることでスポーツを通じた交流の促進を図ってまいります。
 生涯学習の充実について、宮内地区の新たな生涯学習の拠点として、宮内公民館(宮内地区交流センター)の建築工事に着手し、既存の蔵楽と合わせて賑わいの場として整備を進めてまいります。また、魅力ある高校教育への支援事業として、地域と南陽高校、市役所が連携した総合的な探究学習を進めるとともに、発足4年目となる南陽高校市役所部の活動を支援し、地域に定着する人材の育成に継続して取り組んでまいります。
(4)力強い産業の基盤をつくる
 次に基本目標「力強い産業の基盤をつくる」について申し上げます。
 産業の付加価値を高めるため、企業立地奨励金により市外からの企業の誘致や市内企業の新たな工場等への投資を促進し、雇用の場の確保を図ってまいります。また、新たな産業団地の整備やビジネスホテルの誘致を推進するとともに、雇用創造協議会事業によりスキルアップセミナーや就職面談会等を開催し、就労支援を行ってまいります。
 近年、イノシシをはじめとする有害鳥獣による農業被害が拡大しており、営農の継続が危ぶまれる状況になりつつあります。猟友会と連携・協力しながら有害鳥獣の捕獲体制の強化に取り組むとともに、地域おこし協力隊による有害鳥獣対策を継続して実施してまいります。
 「人・農地プラン」が「地域計画」として法定化したことから、地域の幅広い関係者で話し合いを行い、農地を誰がどう使っていくか農地の未来を描く「地域計画」を令和7年3月まで策定できるよう、準備を進めてまいります。
 喫緊の課題である農業後継者の育成・確保については、引き続き「新規就農者育成総合対策事業」等を活用し、国や県、関係機関と連携しながらその育成、確保に努めてまいります。
(5)強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる
 次に基本目標「強くてしなやかなまち・住みよいまちをつくる」について申し上げます。
 立地適正化計画に基づく新たなまちづくり事業の実施は、昨年度に引き続き、民間の宅地開発に対し規模に応じた補助を行うとともに、防火水槽の設置についても支援を行い、市街地の人口密度の維持と空洞化の緩和、税収の確保を図り、コンパクトで住み良いまちづくりを目指してまいります。
 防災について、南陽市自主防災組織連絡協議会により、各地区自主防災組織間のさらなる連携向上、地域防災力の一層の充実強化に努め、「自らの命は自ら守る」ための自助の意識啓発と共助の精神を育みます。最上川の治水対策の促進に向けて、「最上川上流(置賜地域)緊急治水対策プロジェクト」の着実な進捗を国及び県に要望してまいります。また、大きな水害を経験した全国の市町村長の意見交換等の場である「水害サミット」や全国市長会防災対策特別委員会への参加を通じて、他市町村の効果的な水害対策を共有してまいります。
 大規模な災害に備えるため、災害時における防災拠点公共施設(避難所)に、誰もが無料で利用できる無線通信ネットワーク(Wi-Fi環境)の整備を図り、避難者への必要な情報伝達手段の確保に努めてまいります。
 洪水被害の軽減を図るため、県営漆山地区農地整備事業において水田に排水量抑制の機能を加える「田んぼダム」の取組を継続して推進するとともに、実証実験データを蓄積し、農地の多面的な機能の保全事業を実施する団体に対して普及、啓発を図ってまいります。
 農業用ため池の決壊等を防ぐため、防災重点ため池を対象に農業用の利用に供しておらず、管理者との協議が整ったため池について廃止事業に着手し、地域防災上のリスクの軽減を図ってまいります。他にも、浸水対策として、一級河川前川の溢水による浸水被害の軽減に向けて、堰の統廃合及び不要施設の撤去等を推進してまいります。
 公共交通について、フラワー長井線及び市内循環バス3路線の維持と安全運行に努めるとともに、沖郷地区の地域公共交通「おきタク」が持続可能な公共交通となるよう運行協議会への支援を継続してまいります。
 交通インフラの整備について、令和6年度の市道上野新田線及び玉坂線の通年通行の実現のため、引き続き道路改良事業を進めるとともに、長年の懸案であった南陽高校西側の市道六角町富貴田線について、令和8年度の供用開始を目指して事業に本格的に着手してまいります。いよいよ令和5年度に新潟山形南部連絡道路の梨郷道路が開通いたしますが、国道13号の改修や一般県道赤湯停車場線、主要地方道山形南陽線板宮工区等の整備促進に向けて、引き続き国や県に強く要望してまいります。東北中央自動車道により、本市と首都圏が結ばれた効果を一層高めるため、本市へのスマートインターチェンジの早期設置実現に向けた検討と、関係機関への要望を進めてまいります。
 快適な居住環境をつくるについて、空き家対策として空き家の後片付け費用に対する補助により空き家バンクへの登録を促進するとともに、老朽危険空き家除却支援事業を継続し、安心して暮らすことのできる住環境の確保に努めてまいります。雪対策については除雪予算を増額し、「きめ細やかな除雪」や「やさしい除雪」に引き続き取り組むとともに、効果的に除排雪を行うことで冬季間の通行の安全を確保してまいります。また、地域の人と動物が共生できる環境を目指して、飼い主のいない猫や適正に飼養されていない猫の不妊及び去勢手術費用等を引き続き助成してまいります。
 水道事業について、料金負担の公平性を高めるため、料金体系の見直しに着手してまいります。また、管路の耐震化更新を計画的に進めてまいります。下水道事業について、下水道未整備地区への管渠整備と既設老朽管の改築更新を進めるとともに、大橋地区農業集落排水施設について令和6年度4月に公共下水道に接続し、施設の合理化と業務効率の向上を図ってまいります。
 防犯・交通安全について、通学路や生活道路の防犯対策と交通事故防止を図るため、LED防犯灯への補助を継続してまいります。消費生活の安定と向上を図るため、多種多様化する消費者トラブル等解決のための相談体制を維持し、県消費生活センターや専門家による相談業務と連携した取組を継続してまいります。
(6)自然の豊かさを守る
 次に基本目標「自然の豊かさを守る」について申し上げます。
 地球温暖化対策実行計画(区域施策編)を令和4年度に策定し、2050年までにゼロカーボンを目指し、行政・事業所・市民が一体となり、再生可能エネルギーの導入促進、省エネルギー活動等を推進してまいります。
 資源リサイクルについて、元気が出るまちづくり交付金事業による地域コミュニティの環境意識の向上や、排出ごみの分別回収、使用済み小型家電回収事業による再資源化の推進を継続し、関係組織と連携した取組によりごみの減量化を図ってまいります。
 白竜湖について、ヒシの状況を注視し、水質改善や景観の保全を図ってまいります。
(7)人がつながりまちを育てる
 次に基本目標「人がつながりまちを育てる」について申し上げます。
 昨年6月にオープンした「赤湯温泉 湯こっと」は、多くの利用者から好評をいただいており、赤湯温泉の魅力を発信するだけでなく、バリアフリー観光を推進し、障がいのある方や介護が必要な方も楽しめる健康増進と交流の場となるよう運営してまいります。
 「南陽を世界ブランドへ」の構想を実現するため、引き続き株式会社四季南陽様が進める複合リゾート施設「四季南陽」の開業に向けた支援を行ってまいります。
 ラーメン課R&Rプロジェクトは、人気漫画「ラーメン大好き小泉さん」とコラボしたラーメンカードラリー等を引き続き実施し、全国に南陽市をPRするとともに、ラーメンを主役にした地域活性化を進めてまいります。
 地域の課題を住民同士で議論する場として、新たに南陽市自分ごと化会議を開催します。政治や行政を自分ごととしてとらえることで、社会への関心を高め、自分も何かしようとする「自分ごと化」の取組を通じて、まちづくりへの市民参画をさらに進めてまいります。
 持続可能な行政サービスのための財政運営について、新型コロナウイルスの感染状況により税収が大きく左右されるため、見通しが難しい状況でございますが、「南陽市健全な財政運営に関する条例」に基づき昨年12月に公表した中期財政計画により、中長期的展望に立った財政運営を行うことで、市民生活に必要不可欠な行政サービスを安定的に提供できるよう努めてまいります。また、地域活性化に寄与するふるさと納税のより一層の推進を図り、財源を確保するとともに、企業版ふるさと納税を積極的に活用し、企業や民間団体との公民連携の取組を進めてまいります。
(8)発信力のあるまちづくりを進める
 次に基本目標「発信力のあるまちづくりを進める」について申し上げます。
 グローバル化について、新年度はコロナ禍によって需要が落ち込んだインバウンド観光の本格再開を期す年ととらえ、地域資源のさらなる磨き上げを行ってまいります。海外へのプロモーションについても、コロナ禍の状況を注視しながら、台湾を中心に地域連携DMOなどとの広域連携を図り、継続的に実施してまいります。
 情報発信について、市民の皆様が必要とする情報を、ホームページやSNS等で広く効果的に発信するとともに、関係人口拡大に向け、民間事業者が提供する情報配信サービスを利用し、市内外に戦略的な広報を展開してまいります。
 観光資源の活用について、熊野大社や南陽スカイパークなど、コロナ禍の中でも観光需要の高い観光スポットと、ワインや日本酒、ラーメン、フルーツなどの食をテーマとした観光コンテンツを結び付け、さらなる魅力向上を目指します。また、既存の資源と開湯930年を数える赤湯温泉との連携を図り、体験、宿泊を組込んだ着地型コンテンツの作り込み等を行ってまいります。
 菊まつりにつきましては、宮内会場の現代的なフラワーアートの充実を図るとともに、花公園会場の伝統ある菊花を継続し、菊と触れる機会の創出に努めながら、菊づくりの後継者育成や、菊文化の伝統と継承、きくらら祭(さい)やマムフェスなど若い世代の新たな取組を支援し、菊のまちづくりに努めてまいります。
 本市の農業や農産物の魅力を情報発信する農業系のユーチューバーを1名、ぶどう栽培とワイン醸造技術の習得を目指す研修2期生1名を新たに地域おこし協力隊として募集し、地域産業の発信と活性化に繋げてまいります。

5 結び

 いま誰もが知っている「自由」という言葉は、明治時代を代表する思想家であり、慶應義塾を創設した福沢諭吉が、それまでの日本にはなかった概念、英語のlibertyあるいはfreedomを翻訳したものです。
 「自由」は「自らをもって由となす」と記します。自由とは、他人に与えられたものではない自らの意思や考えを、行動の理由とすることを意味しています。また、「自由とは責任を意味する。だからこそ、たいていの人間は自由を恐れる」と述べたのは、ノーベル文学賞を受賞したアイルランド出身の劇作家のバーナード・ショーです。一方、自己の自由を際限なく追求していけば、他者の自由を侵すこととなります。それについて福沢は著書『学問のすすめ』のなかで、「自由と我儘との界(さかい)は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり」と述べています。
 すべての人に保障されるべき権利である自由を、自ら治める自治を行う地方自治体としての私たちも、一定の制約のなかで保有しています。私たちは、他者の権利を尊重しつつ、自ら考え、自らの責任において、現在の、そして将来の市民の幸福を最大限追求する自由と責務を負っています。
 将来にわたって安心して暮らすことができるまちを作ることができるか否かは、自治を行う私たちが今、どんな未来を望み、選択し、そして作り上げていくかにかかっています。この困難な時代だからこそ、まちづくりの主役である市民一人一人がさらに協働し、補い合い、支え合っていくことが必要です。私は令和5年度も皆様とともに全身全霊で市政を運営してまいります。
 市民の皆様ならびに議員各位におかれましては、より一層のお力添えを賜りますよう、心からお願い申し上げます。

(更新日:令和5年3月2日)